「正しい成果主義」を進めなければ会社は滅びる

最後に、社員の不幸せ実感につながる「成果主義」について触れておきます。一般に成果主義とは数字が伸びた人だけをピックアップする仕組みです。成果主義について皆が合意している会社や、アメリカの成果主義のように、多様なところで成果をあげられるような成果主義ならまだ良いですが、【図表1】で示されているように、いわゆる業績評価のみを目指す成果主義では、関わる人たちが不幸になります。なぜなら、競争が不幸につながるからです。たとえ競争に勝ったとしても、得られるのは年収やポジションなどの地位財であり、長続きする幸せではありません。また、競争に敗れた者はやりがいも幸福度も失います。

実際、アメリカの会社では成果主義を見直しているケースがあります。GEでは営業順位を公表するしくみを廃止しました。

「これからの正しい成果主義」について考えよう

リモートワークによって、普段の仕事を見られなくなっている分、成果で判断しがちになっているという話を聞きます。これでは、当てはまらない人の幸福度が下がりますので、気をつけなければなりません。

ではどんな仕組みにしたら良いでしょう。例えば、チーム全員の成果主義にすることが考えられます。リーダーはチーム全体で成果を上げられるようにするのが仕事ですから、チームメンバーが10人いれば、成果が上がった人だけを昇給するのではなく、10人全員が報酬を得られるようにするのです。

そのためには、コミュニケーションが大切です。適切な仕事を与えられているか、のびのびと仕事できているか、しっかり把握した上で、全員の成果を見る。

今までの成果主義とは違う、「みんなの良さを伸ばす主義」とでもいいましょうか。私は、これこそがこれからの正しい成果主義だと考えています。

構成=富岡 麻美 写真=iStock.com

前野 隆司(まえの・たかし)
武蔵野大学ウェルビーイング学部長、武蔵野大学大学院ウェルビーイング研究科長

1984年東京工業大学(現 東京科学大学)卒業、86年同大学修士課程修了。キヤノン入社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学教授、ハーバード大学訪問教授等を経て現職。慶應義塾大学名誉教授。博士(工学)。著書に『ディストピア禍の新・幸福論』(プレジデント社)、『ウェルビーイング』(日経文庫)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など多数。