不登校は、早い段階でのサポートが大切
とはいえ、朝の忙しい時間帯、仕事に出かける直前に「行きたくない」と言われたら、話し合う時間もないでしょう。でもそんな時も、1分でいいので足を止め、手を止めて話を聞いてあげてください。共感を示した上で、火元など留守番中に最低限気をつけるべきことを話し、「帰ってきたらちゃんと聞くね」という言葉を伝えてあげれば、それだけでお子さんの気持ちは軽くなることも多いです。
時間をとって話を聞くと、お子さんは、「昨日、好きな番組が録画できなかったから」とか、大人からすると学校とはまったく関係ないような、稚拙な理由を挙げてくることもあります。でも、本人としてはあの手この手で自分の心を鎮めようとしているのです。稚拙な言い訳は、ワラにもすがりたいという切ない気持ちの表れ。そうした視点を持って最後までしっかり話を聞くと、きっと本当の気持ちが見えてくると思います。
不登校には、①予備期 ②初期 ③本格期、④安定期 ⑤登校刺激時期 ⑥経過観察期の6段階があると言われています。①はコップの水があふれる前の「予兆」が出ている段階、②はコップの水があふれて腹痛などの身体症状を訴え始める段階です(図表1)。
③の「本格期」と④の「安定期」は、学校を休んでいるという点では同じですが、前者は本人に、学校を休むことに対する罪悪感がある、後者は、罪悪感にふたをして考えないようにしている点が大きく違います。そして⑤は学校に気持ちが向き始めるリハビリ段階、⑥は登校を始めて再発防止が重要になる段階です。
できれば、学校を休まざるを得ないほど、お子さんにストレスがかかる前に、①の予備期や②の初期の段階で、しっかりサポートしてあげたいですね。そのためには、親御さんとお子さんの間に遠慮なく話し合える関係ができているかどうかが大切になります。この土台を、ぜひ今のうちにつくっておきましょう。
親も、悩みを抱え込まないで
お子さんが苦しい時は親御さんも苦しいもの。特に働く女性には、仕事、母、妻、ひとりの人間としての自分、とたくさんの役割を持っている人が多いでしょう。これらをしっかり演じ分けようと思うとストレスも大きくなりますから、時にはお子さんの前でも「一人の人間としての自分」を出してみてはいかがでしょうか。
加えて、お子さんに関する悩みもひとりで抱え込まないようにしていただきたいのです。ご主人やお友達に話をしたり、それが難しければ私たちのような第三者に相談するという手もあります。行き渋りや不登校への対応は、お子さんによって、また家庭状況によって千差万別。誰かと一緒に考えていくことで、少しでも肩の荷を降ろしていただけたらと思います。
構成=辻村洋子 写真=iStock.com
コミュニケーションや表現方法について専門的に学び、人材育成や就職支援におけるセミナー講師およびカウンセラー経験を経て、2015年より一般社団法人不登校支援センターにて現職。カウンセリングやコーチングをこれまで約5000件実施。その他、学校や自治体にてセミナー講師として、不登校問題や、親子関係の問題、進路支援やキャリアカウンセリングに取り組んでいる。