誰でも間違いを起こす可能性はある
被害者は「とにかく今の行為をやめてほしい。謝罪してほしい」と思っていることが多く、初期対応を間違えなければ事態がそれ以上深刻化することはほぼないという。「その後は、再発しないよう、部下に真摯に向き合い、一緒にやり方を考えながら信頼関係を再構築していくしかありません。パワハラはいけないと頭ではわかっていても、追い詰められた状況だと誰でも間違いを起こす可能性はあります。そうなってもやり直すことができることも知っておいてほしいですね」(稲尾さん)
また、当事者にならなくても、管理職には会社の担い手として職場環境を整える義務がある。「パワハラを見つけたら、被害者に声をかけたり、加害者に注意を促したりと、事態が深刻化する前にパワハラの芽を摘むことが大切です」(菅谷さん)
社内で解決できないと、加害者と会社を相手取って損害賠償請求を起こすケースもある。パワハラは被害者を傷つけるだけでなく、会社の社会的信用も大きく失墜させる行為。ハラスメントが起こらない職場づくりがより一層求められる。
文=中島夕子 イラスト=おぐらきょうこ
カウンセラーおよび主任講師として公的機関や企業への講演・研修を多数行うほか、職場のハラスメント防止プログラムの開発も手がける。厚生労働省主催「パワーハラスメント対策企画委員会」委員(2016年~)。
慶應義塾大学法学部卒業。企業法務を中心に、不動産関連および離婚、相続等の一般民事事件等も担当。官公庁や一般企業でセクハラ防止等のセミナー講師も行う。財務省コンプライアンス推進会議アドバイザー。