「仕事のできない人に限ってリアル会議したがるんですよ」

ある若手女性社員はため息をつく。「もう、どうしてああいう会議おじさんってうれしそうに『会社にカムバック!』って叫ぶんですかね。全てがテレワークで回ることがわかってしまった自粛期間中、一番問題になったのは会議おじさんさんたちがいかに仕事ができないかってこと。彼らにとっては会社に出社することと、会議することが仕事なんですよ。給料泥棒ですよね?」

他のキャリア女性も、会議おじさんをバッサリ斬って捨てる。「仕事ができないわりに偉ぶる人に限って、リアルで会議したがる傾向はありますね。オンライン会議で連絡事項や意思決定のための議論を端的に効果的にプレゼンテーションする能力がないのを、リアルに会うことで補完できると思うのでしょう。でもそういう人は、そもそもリアルでも大したことは言えていないです」

とある会社では、部長職に子育て中の男女社員が多いために、部長級から率先して「できる限りテレワークで進めましょう」との申し出があったそうだ。「そういう部署は、成績もいいんです。リーダーがいかに効率的に働くかを実践していますからね」と、社員は話す。「オンライン会議、というかテレワーク全体がリアル出社と比べてどういうメリットとデメリットを持つか、定量的に評価できているので、社内にも説明が効くんです」

部長が子育てボスで生産性も高いだなんて、職場IQが高そうだ。「妻から聞こえないふりをされて自宅に居づらい昭和の会議おじさん」が、自分が仕事をしているポーズのために部下に出社を要求する職場のIQはどうだろう。

おじさん、本気で会社以外の居場所を見つけてください

会社は、おじさんたちの寂しいアイデンティティを「いい子いい子」してあげる場所ではない。基本的に心根の優しい女性社員たちは、口を揃えてこう言う。「おじさんたちも、何か人生が充実するような趣味をたしなんだり、会社以外の居場所を見つければいいと思うんですよ」。部下にお守りをさせないでくれ、という厳然たる意思表示である。

2020年3月、リクルートワークス研究所は『マルチリレーション社会』と名づけられたレポートを発表、趣味や仲間や地域や学びといったキーワードから生まれる「つながり」に富んだ社会像を次世代に向けて提唱した。日本の、特にミドル男性層におけるそういったつながりの欠乏を指摘しており、家庭と会社にしか人間関係と居場所のない彼らが「つながり」を構築することで幸福感やキャリアの見通しを改善できると報告している。

家庭と会社以外に、居場所はありますか。テレワークの普及は、新型コロナで「やむを得ず」広まったのではなくて、多様な生き方や価値観を内包するこれからの社会で生きる私たちには必然だったのです。寂しくて「会社にカムバック!」と叫ぶおじさん、これからのご自分の長い人生のために、本気で会社以外の居場所を見つけてください。

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河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト

1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。