性の問題を議論したがらない理由は
もともと日本では、性の問題に対して「できれば目をそらしたい」「口を閉ざしたい」という傾向が見られます。特に子どもに対しては学校も親も言葉を濁しがちで、性教育も盛んではなく、あいまいな説明に終始してきました。そのため、大人になっても性の問題に向き合う力が育まれていないのです。
もし今回の事件が性犯罪ではなく、例えば窃盗のような犯罪だったら、男性全員を排除するという対応にはならないはずです。雇用側も含めて誰もが「その対応はおかしい、男性への偏見だ」と考えるでしょう。ほかの再発防止策を求めて、議論も活発に行われたのではないかと思います。
ところが、ここに性の要素が入ってくると、話は途端に難しくなります。性の問題について議論したくない、でもリスクはゼロにしたい。こうした思いが強ければ、男性シッター全員の予約停止に結びつくのも当然の流れと言えます。
安易な手段に飛びつかないためには、どうしたらいいのでしょうか。それには、僕たちがなぜ性については口を閉ざしたいのか、その原因を探っていく必要があります。本来は性にどう向き合うべきなのか、専門家も含めて議論を尽くしていかなければなりません。
子どもへの性教育は不可欠
また、子どもへの性教育もしっかり行うべきだと思います。教える側が性の話を避けたがっているようでは、子どもたちもまた「できれば口を閉ざしたい大人」になってしまいます。そんな事態を防ぐには、僕たち自身も知識を得て、発達段階に合わせて正しく伝えていくことが大切でしょう。
キッズラインの対応について、ここまで性の観点から考えてきました。次はジェンダーの観点からも考えてみたいと思います。
安易な対応に至ったのは、男性シッターが少ないことも背景になっていると思います。キッズラインでも、登録シッターのうち業務停止の対象となった男性シッターは、全体の3%にも満たない数でした。保育士も男性はまだ少ないと言われており、僕の子どもが通っている保育園にも一人もいません。