6月、ベビーシッター手配サービス「キッズライン」が、男性シッターの新規予約受付を一時停止すると発表しました。登録する男性シッターによる性犯罪を受けての対応ですが、性別でくくっての予約停止には批判の声も。なぜこうした対応になってしまったのか、男性学の第一人者、大正大学の田中俊之先生に聞きました。
息子と遊ぶ父
※写真はイメージです(写真=iStock.com/monzenmachi)

あらゆる策の中でもっとも安易な手段

2020年4月から6月にかけて、キッズラインに登録していた男性シッター2人が、保育中の児童に対する強制わいせつなどの疑いで相次いで逮捕されました。事件自体は決してあってはならないことで、僕も小さい子どもを持つ親として大きなショックを受けています。

しかし、この事件を受けてキッズラインがとった対応には、疑問を感じざるを得ません。同社は、登録している男性シッターすべての新規予約受付を一時停止。今回の事件とは無縁の、誠実に保育に取り組んでいる人も「男性」というだけで業務停止を余儀なくされました。

同様の事件が二度と起きないようにという思いからの措置でしょうが、私はあらゆる策の中でもっとも安易な手段だと思います。事件を起こしたのは男性なのだから、同じ性別の人を全員排除すれば再発リスクはゼロになる──。こう考えた結果ではないでしょうか。

事件が起きた原因や個々人の適正と向き合うことなく、なぜもっとも安易な手段をとったのか。これには日本特有の風潮も影響していると思います。現代の日本では、一見すると男女の問題をめぐる議論は盛んであるように思えます。しかし、性に関わる領域になると、皆途端に口が重くなるのです。