緊急事態宣言が解除され約1カ月半。多くの企業はコロナで失われた数カ月間を取り戻そうと様々な取り組みをしています。数カ月分の売上を取り戻したい思いで、目標を上げたいけれど部下が思ったより頑張ってくれない……。そんな風に思うこともあるのではないでしょうか。今回は、組織改革コンサルタントの吉田裕児さんに部下の力を最大限発揮する本当の叱り方を教えてもらいました。

※本稿は吉田裕児『部下が変わる本当の叱り方』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

アジア企業家会議
※写真はイメージです(写真=iStock.com/itakayuki)

「叱る」の本来の意味を知ろう

「叱る」という言葉には、どういう意味が込められているのでしょうか。多くの人が「叱る」と相手を傷つけてしまい、自分も嫌な想いをすると考えています。確かに「叱る」と言うと、「ののしる」「責める」や「怒鳴る」というように相手を否定し、自分の感情を晴らすイメージが浮かんでくるかもしれません。しかし、これらの言葉と「叱る」ではまったく意味が違います。

「ののしる」とき「自分はお前より偉いんだ! できるんだ!」と優越感に浸ります。「責める」とき「なんでこんなこともできないんだ! バカなんじゃないか」と相手の人格を否定します。「怒鳴る」とき「もう、やめてしまえ! もう、くるな!」と自分の怒りをぶつけます。これでは人間関係を破壊するだけで、何も生みだしません。

これらに対して「叱る」は、相手にこうなって欲しいという願いを伝えることです。組織で言えば、願いを伝えることは「目的・目標達成」に導く行為です。だから、「目的・目標達成」という願いを叶えるために叱る必要があるのです。

目的・目標を達成するためには、相手の間違った「行動」や「考え方」に対して「君がやっていることは違うよ!」「相応しくないよ!」と叱る必要があります。相手に私たちの目
的と目標を示してあげて、「正しい方向へ行こう」と声をかけることが本当の叱り方です。
本当の叱り方をすれば、叱られた本人も「あっ、そうか! 私は間違った方向へ向かっていたんだな」と気づくことができます。そして、上司のあなたも、部下にわかってもらえて嬉しくなるのです。そして、上司も部下もお互いに手を取り合い、目的・目標を達成するために再び歩むことができるのです。