「世界中の皆が仲良く」という人間の英知の集大成

プロトコールが日本に入ってきたのは明治初期。国際社会へ仲間入りをするにあたって「国家として導入する必要がある」と、明治6、7年、当時の宮内省がイギリスのバッキンガム宮殿へ使者を送ったという。外交関係者をはじめ、皇室や華族、財閥など、当時外交の中心を担っていた人々が身につけたのが始まりだ。

「結局、プロトコールは“人の心と生命の安全”を重んじているのです。ゲスト全員に『私は大切にされている』と感じていただくために、ホスト側はどのように敬意を表現すればよいのか。どうしても平等に接することができない場合、どのように配慮すればよいのか。それらひとつひとつに応えるものなのです」ちなみに、プロトコールとはギリシャ語で“にかわ”を意味する。膠とは“のり”のようなもの。「違うもの同士でも、皆が仲良く」という当時の王族たちの思いが表れている。各国のマナーや信仰に配慮し、かつ合理的につくられたプロトコールにのっとることで、世界中で同じ格式が保たれる。もてなす側ともてなされる側の両方がくつろいだ気持ちで親交を深めることができるのだ。

▼グローバルな淑女のためのエチケット3原則
1. 人に好感を与えること
たとえば……「温顔」「足を踏まれた人も“Excuse me.”」
2. 人に迷惑をかけないこと
たとえば……「公共の場で騒がないこと」「TPOに合った服装と行動をすること」
3. 人を尊敬すること
たとえば……「敬老心」「レディファースト」「障がいがある人への配慮」
▼インターナショナルな場で活用したいプロトコール5原則
1. 地域慣習と異文化・異宗教への理解【Local customs respected】
国同士の交流を円滑に行うためには、お互いの地域の慣習や文化を尊重することが第一。一方で自国の精神や文化も正しく理解する必要がある。
2. 序列に配慮【Rank conscious】
出席者に対する敬意表現として、並び順、入場順、席次、挨拶の順番まですべての場で序列が適用される。原則に従いつつ、TPOにより柔軟な対応を行う。
3. 右上位【Right the first】
レストランや乗り物での席、エスコート、国旗の掲揚に至るまで、右側が上位となる。テーブル席では、主催者の右隣に座る人が最上位の主賓者。
4. 答礼・相互主義【Reciprocation】
交流は必ず相互であること。接待を受けたなら、同様に接待の場を設けて返礼する。国際間の慶事や弔事でも、同程度の答礼を行うのが儀礼になっている。
5. レディファースト【Lady first】
建物の出入り、エレベーターの乗り降り、道を歩くとき(男性が車道側)など、宗教的な制約がある場合を除き、欧米諸国では日常生活に浸透している。

具体的には上に挙げた、国や時代を超えて大切にされる心のあり方「エチケット3原則」や、世界共通の敬意の表し方を示した「プロトコール5原則」に詳細が記されているので、ぜひ読み込んでもらいたい。そして最後に、プロトコールの核であり、“高貴な者の義務”などと訳される「ノブレス・オブリージュ」について触れておく。

「それはすなわち、社会的上位者が身につけるべき『人として望ましい心のあり方、振る舞い方』です。唯一無二であるお互いを理解し、敬う。そのために生まれたプロトコールは、長い歴史の中で培われてきた人間の英知の集大成といえるのです」