国交を深める場の共通ルール、それがプロトコール
平成から令和へ時代が移り早1年。ビジネスの世界ではよりグローバル化が進むにつれ、外資系企業など国際的なシーンで働く人々はもちろん、ビジネスパーソンにとって、海外からのゲストをもてなす機会は増えると予想される。その際の知識と心構えは万全だろうか。
だからこそ身につけたいのが「プロトコール」である。聞き慣れない言葉かもしれないが、宮中晩さん会やサミットなど、公式行事や国際会議はすべてプロトコールに基づいて行われている。端的に説明すると「国交における、儀礼上の公式ルール」。国と国とがスムーズに交流を行うため定められたオフィシャルな規則であり、「一般社会におけるコミュニケーションのルール」である“マナー”とは異なることを理解したい。それぞれ日本語にすると「国際儀礼」と「礼儀作法」。ふたつは“似て非なるもの”なのである。
そこで、「日本人のすぐれた潜在能力を引き出し、日本を真の国際国家にすること」を理念に、27年以上にわたり各界のリーダーを指導してきた上月マリアさんに話を伺った。前述のプロトコールに精通し、国際的な紳士淑女の育成にも尽力している第一人者。言葉の随所に品格と重みが感じられる。
「まず歴史からお話しいたしましょう。礼儀作法の根底には、『自然界にあるすべての生命は尊い』という思想があります。ただ砂漠や寒冷地域など、生きていくのに厳しい環境では、自然は克服する対象になっていきました。そうした状況で生まれたものがキリスト教などの一神教で、やがてその教義や地域の慣習にのっとり国交が行われるようになります。しかし航海術が発達すると、宗教や文化の違いからトラブルが頻発するように。そこで19世紀初頭、イギリスとフランスの外交関係者が中心となって、現在のプロトコールがつくられたのです」