転職前になすべきことはキャリアの棚卸し

では、実際に転職活動をする際、どんなことに注意したらいいのか。

田畑さんは「面接で自分の能力を必要以上に高く見せて、入社後にマイナス評価になっては誰の利益にもなりません。ミスマッチにならないよう、転職先の会社が欲しい能力を自分が持っているのかを正確に把握すべきです」とアドバイス。また、企業カルチャー、社風を判断するためにも、2次面接以降は社内の人に会わせてもらい、離職者の数なども聞いていいと言う。「聞きにくい場合は、取引実績があるエージェントに問い合わせてみてください。また、転職に成功した人から担当者を紹介してもらうのもオススメです」

一方、転職しないほうが幸せな場合もあると言うのは西川さん。

「ある女性が転職を希望し、われわれと一緒に“キャリアの棚卸し”をした結果、自分の強みが整理できました。その強みを現在の会社の上層部にプレゼンしたところ、高倍率のMBAの社費留学の対象者に選ばれたのです。結局転職しなかったけれど、本質的にやりたいことが明確になり、大きな一歩をふみ出せました」

そして、自分のキャリアは会社のものではなく自分のものという“オーナーシップ”を自覚することが大事。「オーナーシップが持てる人は会社でどんどんステップアップするでしょうし、将来転職したとしても成功すると思います」

生活の向上や仕事のモチベーションにおいて、収入はとても大事なもの。しかし転職を成功させたいのなら、自分が絶対譲れないもの(must)、自分に何ができるのか(can)、何をしたいのか(will)を、見直すべきだと西川さんは力説。収入だけでなく、この3つを考えることが満足できる転職への第一歩になるだろう。

西川晴之
西川晴之(にしかわ・はるゆき)
パーソルキャリアエグゼクティブエージェント
2001年、ノエビア入社。クライアントへのコンサルティング営業、全国の拠点統括責任者などを経験後、15年にパーソルキャリア(現在)に入社。主にエグゼクティブ領域のキャリアコンサルティングを担当。
 

田畑晃子
田畑晃子(たばた・あきこ)
Keep in touch社長
1992年、リクルート人材センター(当時)に入社。主に法人向けコンサルタントを経験。2009年にKeep in touchを設立し、現職。著書に『採用側のホンネを見抜く 超転職術』(CCCメディアハウス)。
 
東野 りか
フリーランスライター・エディター

ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。