ネットワーク型組織のマネジャーに必要な3つのこと

では、そんなネットワーク型組織をうまく形成し率いていくためには、マネジャーにどのような力が求められるでしょうか。これは3つあると考えています。

①「エンパワメント」と透明性のある評価

課長、部長クラスのマネジャーは、仕事を抱え込むのではなく、部下に権限移譲をするエンパワメント型の人が求められます。メンバーにどんどん権限を移譲し仕事を任せていくと、モチベーションは上がるもの。しかし、任せっぱなしにはせず、先にやるべきことを指示しておくことも大事になります。

部下を評価する際も、透明性を確保しておかなければなりません。仕事をスタートさせる前に上司と部下で評価軸について、しっかり“握る”ことが必要になります。「この仕事でこのラインまで達成できたら評価は上がるよ」ということをプロジェクトに取りかかる前に伝える。そして、進捗状況を定期的に確認することも欠かせません。例えば「現在、あなたは5段階評価で3」などと、上司にとっては億劫なことかもしれませんが、途中評価を共有する。それを怠ると大変なことになります。部下は頑張ったつもりでいても、プロジェクト終了時に蓋を開けてみれば目標からズレていたというのが最も辛い。そうならないために、一つひとつのプロセスで着実にフィードバックしていきましょう。

②社会的なビジョンを示しプロジェクトを推進していく力

これまではオフィスで仕事をしていたので、同じ空間に同僚がいましたが、ひとりでリモートワークをしていると、ときどき何のためにその業務をやっているのか分からなくなってしまいます。そこで、マネジメント側としては、意識して部下に仕事のビジョンを示すべきでしょう。

ただ「売上を上げろ!」と言っても、部下のモチベーションは上がりません。「何のためにこの仕事があって、この仕事が世の中のどんな価値につながっていくか」ということを言葉にして説明していく必要があります。マズローの五段階欲求で言うところの高次な欲求である「自己実現欲求」につながるビジョンを示せるかどうか。

例えば、SDGs(持続可能な開発目標)の概念は、企業のトップだけではなく、今後の世界を担う若い人こそ高い関心を持っています。仕事をすることで社会に貢献していると実感できていれば、メンバーはリモートワークの状況を細かくチェックしなくても頑張ってくれるものです。

③組織の意思決定基準を明確に示すこと

また、組織としては判断の質を上げ続けることが大事です。ひと昔前の会社では、大事な決定を密室でしても許されましたが、今後、それでは仕事が進まなくなります。メンバーから逐一相談が来て、それを承認するだけで仕事が終わってしまう。それは組織としては望ましくない状況です。そうならないように最初から部下に「うちの会社の優先順位はこれが1、これが2、これが3なので、その基準に沿って考えてほしい」とリクエストしておきます。