オンライン飲みで女子のメイクが変化
【宮本さん】メイクしなくなりました。特にファンデを使わなくなりましたね。代わりにスキンケアを大事にしたくなって、今は毎日コットンパックをしたり、スチーマーを当てたりしています。ただ、オンライン飲みの時はファンデを塗るので、それも肌にいいものにしようと思って、自然派コスメの「チェリーブロッサム トーンアップクリーム」を買いました。
【門戸さん】私もファンデは省いて、アイブロウとビューラー、リップだけで時短メイクをするようになりました。そうするとやっぱり肌をきれいにしたくなって、保湿をしたり母親の美顔ローラーを借りたりしてお手入れしています。
【山本さん】私も、肌には何も塗らなくなりました。肌を休ませる時間がつくれてよかったと思っています。マスカラも、前はキープ力重視で選んでいたのが、落としやすさ重視に変わりました。オンライン飲みが終わったらすぐ落とせるように、今はお湯で落ちるマスカラをメインで使っています。
【原田】それは大きな変化だね。これまで、化粧品メーカーにとっては「若者向けのスキンケア商品をどう伸ばすか」が大きな課題だったんだけど、それも変わっていきそうだね。
【加藤くん】メイクではないですが、僕は自粛期間中にヒゲで遊ぼうと思っていろいろ試しました。アゴと鼻の下だけ伸ばしてみたり……。結果、全部似合わなかったので実験は失敗だったんですけど(笑)。
缶チューハイの消費量が急増
【原田】男子も、誰も見てくれないからこそ実験できることがあったんだね。もうひとつ聞きたいんだけど、料理はどう? 外食ができなくなって、皆ご飯はどうしていたのかな。
【門戸さん】前はバイト先でまかないを食べたり友達と外食したりで、ほとんど料理しなかったんです。それが、母に教わってチキン南蛮やキーマカレー、ビーフシチューなんかをつくるようになって、料理の楽しさを知りました。
【磯部くん】お昼ご飯はたまに自分でつくるようになりました。と言ってもパスタとかチャーハンとか、「ザ・大学生」みたいな料理ばかりですけど。最初はネットで検索していましたが、今はレシピを見ずにつくれるようになって、自分なりにアレンジして楽しんでいます。
【加藤くん】僕の実家は、外出自粛になってから生協に加入しましたよ。食材を宅配してくれるから。1回で大量に購入できるようにコストコにも加入していました。
【宮本さん】料理じゃないですけど、私はビールや缶チューハイの量が増えました。コロナ以前は居酒屋飲みがメインでしたが、今は家で毎晩親とビールを飲むし、友達とのオンライン飲みでは缶チューハイ4缶以上は当たり前。自分でもよく飲むなと思います(笑)。
“若者向け健康器具”やスキンケア商品の可能性
【原田】それはお酒メーカーにとってはうれしいだろうな。若者が「宅飲み」の価値を再発見しているわけだね。料理も、これをきっかけにチャレンジする若者が増えれば、手軽な調理器具の需要が増えそうだね。また、家庭でも食材の宅配や大量購入のニーズが高まっていくのかもしれない。動画配信サービスやメイクの傾向にしても、これがコロナ後も続くブームになり得るのかどうか、今後も注目していきたいと思う。
今回の座談会からは、外出自粛で多くの若者が運動を意識するようになった様子がうかがえました。その一方で、参加者のほとんどがこれまでは使っていなかった動画配信サービスに加入しています。学校やバイト、友達との付き合いなどで忙しかった大学生たちに、運動と休息の両方を楽しむ時間的余裕ができた結果と言えるでしょう。
またメイクの話題では、対面の飲み会がオンライン飲み会に変わったことで、スキンケアを大事にするようになったという声が聞かれました。家庭用運動器具やスキンケア商品は、これまでは社会人世代や中高年が主な購入層になっていましたが、これからは大学生もターゲットになり得るのかもしれません。次回は、アフターコロナの人間関係や仕事観、消費意識などについて聞いていきたいと思います。
構成=辻村洋子 写真=iStock.com
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。