産後、健やかに働くためのコツ4選

では復帰後、どのようにして産後うつを予防しながら職場復帰していけば良いのか。具体的なコツを紹介する。

①最重要! 7時間睡眠を意識的に確保する
②強い朝日を浴びながら散歩やランニングなどのリズム運動を行う

「①と②を行うことで、心を元気にして自律神経を整えるセロトニン(幸せホルモン)を増やせます。これがすごく重要で、うつの治療や予防に有効だと言われてるんです」

7時間睡眠については、研究の結果、人の睡眠は前半で身体の疲れを、後半で精神の疲れを取ることが分かっており、しかも最新の研究では、精神の疲れがとれる後半とは、なんと寝始めて6時間以降のことを指すという(石川善樹 医学博士『疲れない脳をつくる生活習慣』より)。

ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵さん

「4~5時間の睡眠で眠気がとれて仕事ができた、私はショートスリーパーなんです! と言う人は、身体は確かに大丈夫なのですが、心をコップに例えるなら、コップに前日受けたストレスはたまったままなんです。それが減らないまま翌日のストレスもたまっていき、3日目にはコップからストレスが溢れ出てしまう。その結果、この場からいなくなりたいとか死んでしまいたいなどと思うようになる産後うつの症状が悪化していくんですね」

とは言っても産後は2時間ごとの授乳などが避けられず、仕事に復帰後はさらに睡眠時間が短くなってしまいがちである。一体どうすればよいのだろうか。

③夫を育児に巻き込むことが不可欠

①と②を確保するために、重要なのが男性の育休取得です。まとまった睡眠や外の光を浴びながらの散歩は、ひとりでワンオペ育児をやっている限り絶対にできないですから。夜中の授乳は粉ミルクにして夫に協力してもらうなど、とにかくまとまった睡眠時間を可能な限り確保するように努め、精神的に安定した状態で出社することが、育休明けに健やかに働けるようになるための一番の近道となります」

子どもを外気に当てないように、薄暗い部屋で一日中、子どもの呼吸を確認し続けるみたいな日々がつづいていくと、ホルモンバランスがどんどん崩れていってしまうので注意が必要だ。特に一番産後うつにかかりやすい時期である産後2週間は、一晩交代で夫に授乳を頼み、別室で7時間の連続睡眠を確保できるようにするのが望ましい産後のあり方である。そのためにも、生まれる前から①と②の重要性について夫によく説明し協力への理解を得ておくことが必要だ。小泉大臣が育休を取った決定打にもなったというドキュメンタリー映画『ママをやめてもいいですか!?』を産前に一緒に見るなどもおすすめである。産後うつの深刻性がよく分かる。

④朝夜メールで「仕事の見える化」を
スマートフォンとノートパソコンを使用する女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/oatawa)

産後復帰した人が絶対にすべきことは、朝業務を始める前に、業務の流れを5~30分単位で組み立てて上司・同僚に送ることだと小室さんは言う。

「上司って目の前で長い時間働いている人は確実に仕事をしてくれていると思っているんです。たとえメールを3行書いては2行消すような仕事しかやっていなかったとしても。でも多くの場合、復帰直後の人はみんなより早く帰るので、どうしても上司からは仕事ぶりを疑われてしまいがちなんですよね」

実際には、復帰後の女性は時間内で効率的に仕事を終えるようになり、むしろ産休前以上の生産性で職場に貢献していることも多いのだが、勤務内容ではなく早く帰ったという事実だけで、上司から以前より頼りにされなくなり、与えられる仕事の責任範囲が薄くなったり、内容も限定的になったりしがちである。だからこそ、この時期は意識的に“自分の仕事を見える化”する必要があるという。

「朝にメールを送ったあとに、実際には日々突発的に急ぎの要件が飛び込んでくることもあると思います。そんなときは業務の優先順位を付け替えて、明日に回せることは明日に回しましょう。そして一日の最後に、今日は何をしたのかということを上司・同僚に送ってから業務を終了。その一工夫で、目の前で働いている人と同様に、あるいはそれ以上に信頼感を得られることもあるのでおすすめです」

復帰後は、子どもの発熱などで急に休むことも増えるので、そのときに自分の仕事の状況がどうなっているのかを、他の人が引き出しを探せばすぐに見つかる状態にしておくことも重要だ。以上に紹介した4つのコツを意識して実行するだけで、育児と仕事の両立はグッとスムーズになる。