2カ月離れていた苦手な人と会わなければいけない負担

現在は、この新型コロナウイルス騒動が落ち着き、以前の状況に戻りつつあります。これから、2カ月離れていた苦手な人と、いきなり毎日顔を合わせることになると、また心理的距離と物理的距離がちぐはぐになって、気持ち悪くなる人も増える恐れがあります。

いきなり0から100ではなく、メールやオンライン会議で意思の疎通をはかりながら、少しずつ距離を調整していく。ある程度、心の準備をしておくことが必要でしょうね。

ただ、今回の新型コロナウイルス問題を機に、リモートワークを適宜続けるとか、時差出勤をするとか、働き方の選択肢は増えていくでしょう。その意味では以前よりも職場の人との適切な距離を保ちやすくなるはずです。パワハラなど職場に長時間いて、ほかに逃げ場がないために深刻になりやすかった問題が、こうした柔軟な働き方によって改善されることも期待できると思います。

わざわざ出社する価値のある職場か

リモートとリアルを組み合わせることで、“雑談”などリモートワークで不足しがちなコミュニケーションを補うことが可能です。

オンラインだと雑談する人はほとんどいないですし、それが許されない空気感さえありますよね。しかし「あのテレビを見た」とか、「こんなものを食べた」とか、他愛もない雑談で他人と何かしら共有することは、人間関係を円滑にしたり、自分の精神を安定させたりする重要な要素です。

ですから今後、何かしら“つながり”はつくってほしいと思います。つながりがなくなると、自分の存在価値まで疑い始めてしまい、かなり危険だからです。

出社したら誰かがいて、自分はここにいるという感覚が取り戻せる、あるいはここに所属して、自分には存在価値があると感じられる、こうしたつながりのあるチームづくりがより重要になってくるでしょうね。今後、オフィスの在り方も見直されていくと思いますが、マネジャーは自分の職場がそのようなつながりを感じられる職場になっているか、わざわざ出社する価値のある場になっているか、見つめ直す必要があります。

構成=池田純子 写真=iStock.com

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務