「自粛しない若者たち」の報道をどう思う?

【原田】話を聞いていると、皆はしっかり外出を自粛しているようだけど周りはどうなの? 一時は「自粛しない若者たち」って若者を批判するような報道もあったよね。

【Cくん】確かに、周りにはクラブに行ったり路上で飲んだりと、批判されてもおかしくない子もいました。でも、そんな行動をする人はほんの一部だと思います。

【Bさん】自分の周りを見る限りでは、外出しているのは若者だけじゃないと思います。だから、よくニュースで言っている「若者」って何歳ぐらいを指すのかなって不思議で。私は20代だと思っていたんですが、スーパーに行くと同世代はほとんどいなくて上の世代の人ばかりだし。

【Aさん】私は、そう言われても憤りは感じないです。最近はマスコミも「若者」ってひとくくりにせずに報道してくれるようになったし、日テレの藤井貴彦アナは「今テレビを見ている皆さんのような人たちがいるからこそ医療崩壊を防げています」とか、自粛している私たちの心に響くことを言ってくれる。そういう情報は若者が見るSNSでも拡散されているので、くやしさは感じなくなりました。

【原田】ニュースで言われる「若者」には君達も入っているよ。でも実際は、自粛要請に応じている若者はかなり多いと思うんだ。逆に僕の世代は、ITスキルがない分、家で楽しむことができなくて、外でストレスを発散しがちになっている可能性がある。そう考えると、社会に配慮する意識は若者のほうがむしろ高いのかもしれないね。

コロナを機に政治意識が高まる若者たち

【Aさん】若者の間では、コロナをきっかけに政治意識も高まっているように思います。若者が、休業要請で経営危機になったクラブやライブハウスを守ろうって署名活動をした時には、実際に東京都が動きましたよね。これで「政治に参加する手段は選挙だけじゃないんだ」って皆が気づいたと思うんです。おかしいと思ったら声を上げていいんだって。若者の意識が変わり始めているから、今後は政治も変わっていくんじゃないかと思います。

【原田】日本の若者は、海外に比べて政治への参加度が低いと言われてきたけど、コロナで大きく変わりつつあるんだね。それはとてもいいことだと思うし、どんどん政治を動かしていってくれることを期待しているよ。

外出自粛が続く中でも、若者たちは定額制の動画サービスやアプリ、インスタ、ゲームなどでしっかり楽しんでいるようです。時間があるうちにと、新しい趣味にチャレンジする姿勢も見てとれました。また、コロナをきっかけに政治への参加意識も高まっているようです。私たち大人は、とかく「会社に行けない」「遊びに行けない」「日本経済がダメになる」と後ろ向きになりがちですが、目の前の時間やその後をどう有意義に過ごすか、前向きに考える必要があるように思います。

構成=辻村洋子 写真=iStock.com

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。