洋服は玄関で脱ぎ、シャワーに直行

さて、家に帰ってきました。家の中では、マスクも外して、ペンキのことなど考えずリラックスしたいものです。

でも、玄関では緊張感を持って、一挙手一投足を慎重に、神経質にやりましょう。

かばんは部屋に持ち込まず、玄関に置きます。上着も脱いで玄関に置いておきます。服は、玄関で下着以外すべて脱いで、洗面所に直行して洗濯機につっこんでください。そのままお風呂に入ってシャワーを浴び、髪の毛のペンキも落としてしまいましょう。

玄関ドアのノブ、玄関の電気のスイッチも、まだペンキを洗い落としていない手で触った場所です。これらは「家の外とみなして、外出時以外は触らない」のが簡単です。もちろん、その都度アルコールなどで消毒してもいいです。荷物の受け取りなどで、玄関のドアノブや電気のスイッチを触ったあとは、手についたペンキを洗い流しましょう。

思わぬ危険があるのがスマホです。せっかく帰宅してシャワーをあびても、外でペンキまみれの手で触ったスマホを室内に持ち込んで触ってしまっては元も子もありません。家の中ではスマホをファスナー付きプラスチックバッグに入れて、そのまま使えば自分を守れます。もちろん、アルコールや過酸化水素などで消毒してから使ってもいいでしょう。

これで「家の中にはペンキを持ち込んでいない」とリラックスできます。

面倒ですが、我が家ではやっています

ここまで聞いて、「こんな面倒なことを、本当に毎日やっているの?」と思われるかもしれませんが、我が家ではやっています。

実は普段から、「風邪の患者さんを診察した」という日は、帰り道は鼻や口を触らないよう気を付けていますし、玄関のドアを開けたらお風呂に直行しています。風邪の患者さんを診察した日にこの手間を忘れると、大抵風邪を発症するので欠かさなくなりました。

医者が毎日、ノロやインフルエンザの患者さんを診察しても自分がかからないのには、理由があるのです。

何の特殊資材もお金もいりません。いずれにせよお風呂には入るのですから、帰宅後お風呂に直行することで失うものは何もありません。アルコールがなくても石鹸で洗えばいいことを知っているので、アルコールが売り切れていても慌てません。

「情報リテラシー」が武器になる

さらに、ここまでの知識をベースに、今後の最新の情報をしっかりと受け取っていただきたいと思います。

例えば、今後研究が進めば、「実は新型コロナウイルスは、36時間後には病原性を失っている」などの新しいデータが出てくることもあるでしょう。そのニュースを聞いたとき、「では、『4日で消えるペンキ』ではなく『36時間で消えるペンキ』だということね」と、自分の文脈に置き換える力を身につけてくださると、とてもうれしいです。

こうした「情報リテラシー」を武器に、感染からも、流行に伴う恐怖からも、ご自身を守ってください。

構成=大井 明子 写真=iStock.com

眞鍋 葉子(まなべ・ようこ)
内科医

2011年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、健康長寿医療センターを経て、現在は都内のクリニックに勤務。4月7日にFacebook上で、「コロナ感染から身を守る方法」という文書を公開、5月2日時点で閲覧回数が約23万回に上り話題に。5月9日には田口トモロヲさんのナレーションによるYouTube動画も公開された。