「金持ちほどケチ」とはよく言われることですが、伝統的な富裕層は、普段どんな生活をしており、そして世界を揺るがすコロナ不況の中、どんなお金の使い方をしているのでしょうか。今回は学費の高さで有名なイギリスのボーディングスクールに子供を送る親たちの、質実剛健すぎるエピソードを紹介したいと思います。
年配のカップルでのディナー、話題のキッチン
※写真はイメージです(写真=iStock.com/JohnnyGreig)

村を丸ごと所有しても夕食はサバの燻製

私の子供達はイギリスのボーディングスクール(良家の子女が通う寄宿学校)に通っています。現在居住しているシンガポールから通わせている親に比べると、現地のイギリス在住の親たちの方がお金にタイトな印象を受けます。

ボーディングスクールの年間学費は4万ポンド超(約530万円超)。イギリス人の平均年収は約3万ポンドなので一般家庭の子供が通える金額ではありません。(ただし、バーサリーという試験にパスすると学費から日用品に至るまで全て免除される奨学金制度があります)

他のヨーロッパ諸国と比べても、クラス(階級)社会がいまだに根強く残っているイギリスですが、そのクラスを決めるために出身校はとても大切なのです。実際、子供が入学してみると、いわゆる“タイトル持ち(サー、ロードなどの貴族的称号を持つ人々)”の家庭も珍しくなく、長男の同級生にはウィキペディアにも掲載してある第一次世界大戦で有名なドイツの将軍の子孫や、誰でも聞いたことがあるような大企業のオーナー一族出身者などもいました。

とはいえ、彼ら全員が楽々とこの高い学費を払っている訳ではありません。由緒ある家庭であればあるほど、いわゆる“アセットリッチ、キャッシュプアー(資産はあるけれど現金なし)”なケースも多いのです。先祖代々の不動産や称号を持っていても、それらが現金を生み出すわけではありません。ゆえに、子供の学費を捻出するために節約に励まなくてはならず、アッパーな彼らは大抵地味で大変な倹約家です。

子供の学校に、小さな村を丸ごと持っているタイトル持ちの家出身の同級生がおり、その両親が所有するマナーハウスを休暇中に訪問、滞在した時のことです。敷地は広大で由緒ある建物でしたが、とにかく古いので、水回りはお世辞にも快適とは言えず、お湯はタンクで貯める方式で使える量が決まっている為、シャワーを浴びている途中にいきなりお湯が水になってしまうこともよくあります。そのためかその一家はシャワーを毎日浴びないそうです。このような古くて無駄に大きい家は途方もない維持費と税金がかかるのでとにかく節約、節約です。

レイディ(貴族夫人)の称号をもつ母親、そして年頃の娘もお化粧っ気はなく、ギンガムチェックや花柄のローラアシュレイ調の素朴な装い。もちろんブランド物とは無縁です。そこかしこに飾ってある先祖の肖像画に見つめられながら夕食のメインはサバの薫製(スーパーで2切れ2.99ポンドで売っている)でした。

休暇はさらに田舎にあるカントリーハウスで過ごします。娘は大学入学前にギャップイヤー(休学)をとり、幼稚園でアルバイトをして貯めたお金でオーストラリアやアジアに旅行してみるのがささやかな夢だそうです。