パンがやめられないのはグルテンの“麻薬作用”かも

腸内環境を悪化させ、肥満を引き起こすもうひとつの原因が小麦に含まれるタンパク質、グルテンです。最近の小麦は品種改良でグルテンを多く含みます。グルテンは小腸から分泌されるDPP4という酵素でアミノ酸まで分解されますが、分解酵素が十分に生成されないと、グリアドモルフィンという未消化のペプチドのまま小腸から吸収されます。

このグリアドモルフィンはモルヒネと同じ構造を持ち、脳に入り込んで麻薬のような陶酔感をもたらし「もっと食べたい」とさらなる依存を引き起こします。さらに腸粘膜に炎症を起こして下痢やお腹の張り、アレルギー症状が起きることも。ただ、グルテンの反応には個人差があり、絶対悪ではありません。「パンがやめられない」「小麦を食べると強い眠気を感じる」という人は、グルテンを抜いて体調の変化を見るといいでしょう。

痩せ体質の人の腸には酪酸菌が豊富にいることがわかっています。酪酸菌は誰の腸内にもいるごくありふれた菌です。糖質やグルテンの過剰摂取に気をつけながら、図のような習慣を続けると、自然と酪酸菌が増えて痩せ体質に近づきます。

痩せ菌を育てるために始めたい7つの習慣
ドクターの日々の食べ方/有機酸検査を受けてみた

構成=中島夕子

桐村 里紗(きりむら・りさ)
医師

1980年、岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。内科医・認定産業医。tenrai代表医師。臨床現場において最新の分子整合栄養学やバイオロジカル医療・腸内フローラ研究などをもとにした予防医療、生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積む。生命科学、常在細菌学、意識科学、人文科学、最新の数理学などをもとにヘルスケアの意味を再定義し、食や農業、環境問題への洞察をもとに人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」をはじめ、最新のヘルスケア・ウェルネス情報をさまざまなメディアを通じ発信している。主な著書に『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(ともに光文社新書)など。