コロナ後、「変化」があるとしたら?

コロナ・ショックが、われわれの生活や社会にどのような変化をもたらすのかは、まだ分からない面が多いが、身近な問題と、将来の可能性の二つに簡単に触れておこう。

今後、コロナウイルスの感染予防のために、時差出勤を行ったり、在宅勤務による「テレワーク」の日が増えたり、或いは、一時期外出に制限が掛かるかも知れない。こうした状況は、我々の働き方に変化をもたらすだろう。

テレワークの実施自体は、少なくとも、通勤の時間の無駄とストレスの削減をもたらす点だけでも大きなメリットがあるし、技術的にもかつてより広い範囲の業務で対応可能になっているから、今後拡がることが確実だ。コロナ問題はこの普及を後押しする。

テレワーク浸透で成果主義が強化される

テレワークでは人の評価により客観性が必要になる。そのため、評価とひいては報酬が仕事の「成果」に連動して決まるようになるので、「成果主義」が強化される。

また、働く人の時間が自由になるので、「副業」がより普及するだろう。

そして、これら2つの変化は、長期的に、独立事業主的な個人が複数の会社と契約して働くような働き方の普及に繋がっていくはずだ。

こうした「働き方」ばかりでなく、在宅勤務やテレワークによる自宅滞在時間の拡大は、日頃家庭に関わっていない働き手(男性が多いだろうか)が、家事や育児の重要性に気づくきっかけともなるだろう。

インフレへの転換の可能性も

最後に、一つ付け加えよう。

今回、コロナ問題に対する世界各国の経済政策は、リーマン・ショック後までの、もっぱら金融緩和政策だけに頼ったものではなく、大きな財政支出を伴うものになる。金融と財政両方の拡大を続けた場合の経済理論的な帰結は「インフレ」だ。当面は、日本はもちろん、他の先進国各国も物価上昇率が低く、デフレが心配であったり、インフレ率が低すぎたりすることが課題なのだが、将来は、インフレ率が上昇し、預金にもそこそこにプラスの金利が付くような状態が訪れれるかも知れない。

今現在は、世界が「日本化」してデフレ傾向を強めていることが問題なので、金融・財政両面で拡張的な政策が採られることは適切なのだが、後で振り返ると、コロナ問題が、デフレ経済からインフレ経済への転換の契機だったということになるのかも知れない。

もっとも、こうしたことが仮に起こるとしても、かなり先の話だ。当面行うべきことは、感染症の予防と健康管理に気を付けることと、あわてずに淡々と基本通りにお金を扱うことだ。

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山崎 元(やまさき・はじめ)
経済評論家

専門は資産運用。楽天証券経済研究所客員研究員。マイベンチマーク代表取締役。1958年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。以降、野村投信ほか12回の転職を経て、現職。『山崎先生、将来、お金に困らない方法を教えてください!』(プレジデント社)など著書多数。