“不安の時代”に流行ること

【牛窪】そういえば最近、若い女性の間で、糸つむぎや刺し子、羊毛フェルトなど、手仕事系の趣味を持つ人が増えているんですよ。私も何度か取材しましたが、そうすることで「気分が安らぐ」と言います。

マーケティングライターの牛窪恵さん

【中野】単純作業をすると、自己効力感が得られるので不安が増大するスパイラルが止まりますよね。刺し子や刺繍のような作業はとても適しているんじゃないでしょうか。あとは現代の女性だとセルフネイルなんかもそうでしょうか。お仕事としてネイルをやりたいということではなくて、ちょっと大げさに言えば「自分にも行動を起こして成果を挙げることができる」という感じを得たいからやる、という作業のことです。不安の多い時代には意外とこうした、単純作業的で達成感や自己効力感を比較的たやすく得られる趣味というのが、はやるんじゃないかと思います。

昔の貴族層がやっていた写経も、似たような効果があったのかもしれません。誰もが、「人類の歴史は困難の連続であり、今の私たちも同じ流れの中にいる」と俯瞰的に考えられるわけではありません。「もう終わりだ」と思ったときに人々が手掛けてきたことが、その時代時代に応じてありそうですね。

収束しても元通りにはならない

【牛窪】実は私もいま、テレワーク中のスタッフに、あえて資料のバラ打ちなど、形になるルーチン作業を任せています。やっぱり不安でいっぱいになって「コロナ疲れ」になったら、手を動かして何かを作る、形にするのが効果的なんですね。

【中野】そうですよね。不安に押しつぶされないために。それにこの新型コロナの騒動もいつか必ず収束しますし、決して「もうおしまいだ」ということにはなりません。

ただ、収束しても元と同じにはならないでしょう。出口戦略というか、今後どんな風に社会が変化していくのか、あるいはこの事件を前向きにとらえて社会を変化させるのか、そしてその変化にどう適応するのか、一人ひとりの知恵が試される時が来ます。いまは、じっと耐えて、それを決めるための知を磨いていくべき時期なのではないでしょうか。

自分で考えて決めるか、誰か強い人についていくか、それはどちらがいいとは言いにくいですよね。数は異なるとはいえ、どちらも生き残っているし、どちらもアリでしょう。個人の好みの問題なのですが、自分で考えるのがいやだという人は、ついていく相手を探すのも手かもしれません。

何が正解かは、すこし時間をおいてみないとわからないのです。ただ、どのやり方が正しいかを競うのは無駄であるように思います。「自分のやり方がよかったのかどうかは自分で判断する」という一点は、決めておいたほうが生きていきやすくなるのではないでしょうか。

構成=大井明子 撮影=プレジデントウーマン編集部

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター

マーケティング会社インフィニティ代表取締役。修士(経営管理学/MBA)。2020年4月より、立教大学大学院・客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。財務省・財政制度等審議会専門委員、内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか、著書を機に流行語を広める。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。