健康経営は株価を上げる?

経済産業省では2016年から、東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄」を発表しています。これは、従業員の健康管理に経営的な視点から取り組んでいる企業を選定するものです。

米国には90年代から、これに近い表彰制度「Corporate Health Achievement Award(優良健康経営賞)」があります。90年代にこの賞で表彰された企業群と、一般的な大企業群であるS&P500との株価の推移を1999年から2012年間わたって比較したところ、表彰群の株価のほうが総じて高かったという結果を報告している研究もあります。

もちろん、「何でもいいから健康経営に投資すれば、会社の業績は上向く」と短絡的に考えるのは禁物です。たとえば、社員たちに高価な健康器具を配ることに多額の費用をかけるよりも、現場のニーズに対応したさまざまなITテクノロジーを導入して労働時間を大幅に減らせるなら、そのほうが健康増進に役立つかもしれません。

会社の生産性を維持・向上させていくうえで従業員が健康であることは不可欠ですが、健康増進施策として何が最も効果的かは、これから検討していく課題です。

写真=iStock.com 構成=Top Communication

黒田 祥子(くろだ・さちこ)
早稲田大学教育・総合科学学術院 教授

1994年、日本銀行入行、金融研究所にて経済分析を担当。一橋大学経済研究所助教授、同准教授、東京大学社会科学研究所准教授を経て、2011年4月より早稲田大学教育・総合科学学術院准教授、14年4月より現職。専門分野は労働経済学、応用ミクロ経済学。