見栄より「損しないこと」に価値がある

「これまで多くの家計を見てきた経験からすると、私たちの心が貧乏神を作り出しお金が貯まらないことが多いですね」という藤川さん。

どんなに収入が多くても満足できない人は多い。その原因は人間が物事を「他人との比較」で考える傾向が強いからだ。自分よりたくさん稼いでいる人がいれば、もっと高い収入が欲しくなる。これは心の問題といえる。節約家は自分の中にそうした貧乏神を見つけ出し、追い出すのが上手な人たちなのだ。

代表的な貧乏神をピックアップすると、【図表3】のように8種類ある。

心に住みつく8つの貧乏神

誰でも少なからず「いいものが欲しい」と思う。それが高じると「そんなものに?」と周囲が疑問に思うものにも、お金をつぎ込むようになってしまう。これが「見栄っ張り」の貧乏神だ。見栄が強くなると、たとえば「自動車を手放すべき」と頭ではわかっても、心が手放すことを許せなくなる。

「相手に嫌われたくない」とは誰でも思っている感情だろう。その結果、勧められるままに高額な商品をローンで購入したり、必要のない保険にいくつも加入したりしてしまう。あるいは、「他の人と同じものが買いたい、同じことをしたい」というのも同じ。「他人の目ばかり気にする」貧乏神の仕業だ。藤川さんは言う。

「1億円貯めた人は、自分の価値観がしっかりしているので人と比較しません。見栄を張る必要もない。お金持ちが集まる飲み会に参加したことがありますが、ごく普通の居酒屋でしたし、参加者の多くがその店の割引クーポンを用意していました」

見栄を張ることよりも「損をしないこと」に価値があると考えているのだろう。

1億貯まる人の情報収集力

「比較検討しない」人も貧乏神を呼び寄せる。牛乳やトイレットペーパーなどの日用品は比較して、少しでも安い店舗で購入するのに、金融商品となると「難しい」「面倒くさい」ことを理由にと比較をしない人は多い。これでは日々の生活で10円、20円の節約をしても意味がない。

都合の悪い将来のことから目を背け「目先のことばかり考える」人も貧乏神に好かれる。よくあるのは、マイホームを購入する際に現在の家賃負担額や貯蓄ペースから購入できる物件の金額を決めるパターン。将来、教育費負担が増えると予想される時期でもクリアできるなら問題ないが、そんなことも考えず当面のローン返済額が低いというだけで契約してしまう人もいる。

「1億円貯めた人は、今だけでなく将来も考える。徹底的に情報収集して比較・検討してからでないと、お金を支払わない。調べるだけでは不十分と感じたら、詳しい人のところに話を聞きに行く。そんな行動力を持っている人たちなんです」