テレビやゲーム三昧の子どもをどうすればいいのか

大枠の考え方は「放牧型」で、マストとベターの視点を持ち、子どもと対話しながら決めていけばいい。とはいえ、「うちの子は、マストのことをやる時間以外は、結局テレビやゲームで過ごしそう」「実際、そうなっている」と、頭を抱えている親御さんもいるでしょう。

なぜ子どもたちはゲームやテレビが好きなのか? 子どもたちは、「楽しいか、退屈か」という軸にしか反応しないからです。この軸で、すべての行動を決めています。

一方、親の判断軸は、「正しいか、悪いか」。グラフの4象限で表すと、ゲームやテレビは左上の「楽しい」&「悪い」ゾーンですが、漢字練習や算数ドリルなどはおそらく右下の「退屈」&「正しい」ゾーン。子どもたちを「楽しい」&「悪い」ゾーンから「退屈」&「正しい」ゾーンに引きずり込むのはものすごく難しいのです(図表1)。

大人の軸と子どもの軸の違い

親は「正しくて楽しいこと」をどれだけ知っているか

しかし親にも子どもにもハッピーなゾーンが1つだけあります。「楽しい」&「正しい」ゾーンです。子どもをここに誘い込むことは難しくありません。でも親の方が、ゲームでもテレビでも、漢字練習や計算ドリルでもない別のもの、「楽しい」&「正しい」ゾーンにあるものをどれだけ知っているでしょうか?

まずは親の方が発想の軸を変える必要があります。親はだいたい、グラフでいうと右下の「退屈」&「正しい」ゾーンしか視野に入っていません。発想を変え、右上の「楽しい」&「正しい」ゾーンにあるものを、調べ、発見し、学ぶのです。

実は、テレビや漫画、ゲーム、YouTubeも、全部が全部「悪い」わけではありません。視点を変えてみると、この中にも「楽しい」&「正しい」ゾーンにあるものはたくさんあります。それを紹介することはもちろん可能ですが、この休校期間を、そういうものを親が見つけ出して、子どもと体験する時間にしてみてほしいと思います。

「正しい」「悪い」の価値観は人によって違いますし、「楽しい」「退屈」も子どもによって違います。自分が「いいな」と思い、かつ子どもが「楽しい」と思うものを探究してみてください。それができたなら、この1カ月も「なんで『やっておきなさい』って言ったことができてないのっ⁉」と、ケンカを続けずに楽しく過ごせそうですよね。

構成=大井 明子 撮影=プレジデントウーマン編集部

宝槻 泰伸(ほうつき・やすのぶ)
「探究学舎」代表

1981年東京生まれ。3兄弟の長男で、一風変わった家庭教育を実践する父のもと育つ。高校は中退し、大検を取得して京都大学に進学。弟2人も京都大学へ。父から受けた独特な家庭教育とそのノウハウを著した『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)が後に話題となる。2011年「探究学舎」設立。プライベートでは5児の父で、自宅は必ず公園の近くにするというこだわりを持つ。