ベビーシッター代はなぜ経費にならないのか

日本も、シンガポールや香港のように、英語ができるフィリピン人のヘルパーなどを気軽に安価で雇うことができれば、待機児童の解消にもなりますし、子供の英語力も上がるのではないかと思うのですが、現在、個人でスポンサーになれるのは一定の条件をクリアした外国人のみ。企業がスポンサーになると、国は管理をしやすいですが、現況の社員として雇うため、どうしてもコスト高になってしまいます。待機解消に加えて、こういったコストを軽減させるために冒頭に紹介したベビーシッター利用支援事業ができたのでしょう。

しかし、ベビーシッター利用支援事業を利用しても、前述のように後から高額の税金が来るのであれば、やはり保育園でないとダメだと思う人も多いのではないでしょうか。日本もシンガポールのメイド税に対する控除のように、この制度を使うための税金の控除をしてもよいのかもしれません。

ちなみに、ベビーシッター減税に関しては2017年度税制改正で給与所得者の「特定支出控除」として、盛り込まれる可能性がありましたが、見送られています。

国税庁HP:給与所得者の特定支出控除

今後どこかで「特定支出控除」として、盛り込まれたとしても、特定支出控除は利用しにくいというデメリットもあります。そもそも自営業者は利用することができません。日本は、接待交際費などの範囲は広いのに、なぜベビーシッター代が経費にならないのかという議論になっています。

税金がかかるなど注意点も多いですが、その後の人生にかかる子供の学費や自分の老後の費用などを考えると、保育園に入れなかった場合など、ベビーシッター利用支援事業を利用してもキャリアは継続した方がよいでしょう。例えば、会社の人事や総務などと相談をしながら、企業にベビーシッター代を一部負担してもらうなども含めて現実的な方法を模索するのもよいのかもしれません。

利用前にきちんと調べて、自分の税金額を試算し、申告手続きや税額の計算方法等、詳細は、お住まいの地域を管轄する税務署にご相談ください。また、事業の内容自体を知りたい場合は問い合わせ先の少子社会対策部保育支援課などに質問をするとよいでしょう。

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花輪 陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年からシンガポールに移住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』など著書多数。