厚生労働省が2019年12月24日に発表した、同年の人口動態統計の年間推計で、日本人の国内出生数は86万4000人となりました(前年比で5.92%減と急減)。出生数が死亡数を下回る人口の「自然減」も51万2000人となりました。少子高齢化と人口減少が加速すれば、現役世代は将来の年金も十分にもらえない可能性が高いです。日本の年金は現役世代の保険料や税金から大部分が成り立つからです。社会システムを維持するには、女性や高齢者の活躍が欠かせませんが、最後のカードが移民になります。
私が取材をした世界三大投資家の一人、ジム・ロジャーズ氏は、歴史的に見れば鎖国をした国は貧しくなり、開放した国は豊かになる、と言います。国を閉ざして貧しくなった例として、かつてのビルマ(現ミャンマー)を挙げています。東南アジアでも有数の豊かな国であったビルマは、1962に軍事クーデターで政権奪取した党に支配され、1980年代末まで鎖国的社会主義体制が敷かれました。その間、アメリカによる経済制裁やインフラ不足を背景に転落の一途をたどり、現在ではアジア最貧国の1つです。逆に、国を開放して豊かになった例としてアメリカやシンガポールを挙げることができます。両国は移民を受け入れ続けているため人口も増え続けて経済成長を続けています。
シンガポールでは、国民の仕事と重複しない高度人材や低賃金労働者を海外から一定の割合で受け入れ続けています。受け入れ国や数については人口比でコントロールし、厳しく監督しているために社会は安定しており、治安もよいです。
移民をネガティブに考える人も多いですが、移民は新しいアイデア、仕事、資本を持ってくるために国の変革によい影響をもたらします。また、外国人ヘルパーを受け入れることによって、女性から育児や介護など家庭の仕事を切り離して、女性が安心して働ける社会を実現させることが可能になります。