軽症例、無症候例が潜伏? 手洗い、咳エチケットの徹底を

重症化しやすい人が限られているとはいえ、岩田先生はまだまだ油断はできないという。有効なワクチンや特効薬がないうえに、風邪と区別がつかない軽症例や無症候例が「ステルス化」している可能性を否定できないからだ。

実際、武漢市の死亡率が突出したのは軽症の患者が知らずにウイルスを広げ、パニックに陥った患者が病院に殺到したために病院機能がパンクし、院内感染が生じたのではないかと推測されている。実は、SARSや2012年に中東で流行したMERS(中東呼吸器症候群)も病院に勤務する医師や看護師の感染例や院内感染から重症化するケースが多かった。

「今後、感染経路がはっきりしないヒト−ヒト感染例(三次感染)の報告が増えると思いますが、その際はパニックを起こさないことが肝心です。一般の人がとれる対策は手洗いの徹底と咳エチケットです。そこは変わりませんので、自分たちができることをしっかり続けましょう。しばらくは学会や行政からの情報に注意してください」。

感染症はヒトとモノの流れにのってやってくる。日本も世界の流行と無縁ではいられない。私たちも新しい感染症が流行するたびに慌てないよう、意識をかえていく必要がありそうだ。

井手 ゆきえ(いで・ゆきえ)
医療ジャーナリスト