親の意識・意図・想いの重要性

ベットシェアをしているか、していないかという観点だけから研究を進めた場合、親子の絆はどのくらい強いのか、どのくらい親は意図的に(子供のために)そのような環境を作っているのか、という親子間の重要な要素がコントロールされていないものがほとんどです。家の間取りの問題でベッドシェアをしている人から子供の情緒的安定に想いを強く込めている人まで、一言でベットシェアといっても様々な背景があるはずです。

上述したアメリカの研究でも、意図的に6歳までベッドシェアをしていた人たちは、なんとなく慣習的に独り寝をさせていた人たちと比べて、寝ている時間だけでなく、日中の子供との関わり方への態度が違った可能性もあります。

実際、子供の情緒安定には、親との愛着形成が重要であることが多く示されてきており、そのためには、過ごす時間の長さではなく、過ごし方(質)が大切ということがわかっています。寝不足やうつに苛まれて子供と過ごす時間が長くてもいい影響が出るとは考えにくいでしょう。また、いくら長い時間一緒に子供といても、その間、スマホやテレビ、ママ友に夢中になっていたりだと愛着形成はうまくいきません。寝方(独り寝をさせるのか一緒に寝るのか)についても、どちらがいいかは、それぞれの親子ごとで、最適なあり方はどういう形態なのかを考えたうえで、「子供の成長に合わせる」だけではなく、「自分たち親子に合った」選択をすることが最も良いと言えるでしょう。

参考文献
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写真=iStock.com

細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学大学院情報科学研究科 加齢医学研究所認知行動脳科学研究分野准教授

内閣府Moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業T創発的研究支援)研究代表者。脳情報を利用した、子どもの非認知能力の育成法や親子のwell-being、大人の個別最適な学習法や行動変容法などについて研究を実施。