70~80年代の子育ては、「独り寝」が半数以上

1960年代の日本では、親子の川の字寝率は、91%だったのに対し、70~80年代前半になると、2歳児で約40%、3歳児では49%と、その割合が一気にさがっています。この時期は、欧米に倣い子供部屋で独り寝をさせようという考え方が主流になりつつありました。従来の「抱っこ」「川の字寝」は子どもの自立心の発展を損ない、育児に手間もかかるから、と否定的に考えられていたのです。

おそらく70~80年代全前半生まれくらいの人は、子育て時におばあちゃん等から、「泣いたからってすぐに抱っこしたら抱き癖がつくのよ……」「早くひとりで寝られるようにしないと……」等と小言を言われた経験がある人もいるでしょう。

ところが、80年代後半になると、母子の愛着形成の重要性、添い寝が乳幼児に与える安心感や情緒的安定が示されるようになり、寝るときは母子同室がよい、という考え方に戻ってきます(当然のことながら、添い寝に伴う多くの危険性は、同時に提唱されています)。

世界の寝室事情

子育てにまつわる多くの情報の中に、「欧米式」という言葉を見かけます。そのような煽りもあり、アメリカやヨーロッパでは、全ての家庭で乳幼児は別室で寝ている、という印象を持っている人が多いと思います。実際どうなのでしょうか。

2017年にオランダの研究チームが、世界の母子のベッドシェアに関する論文を出しています。その報告によると、日本では、54.4%の家庭が乳幼児期はベッドシェア(日本でいうところの添い寝)であるとしています。

欧米ではアメリカ(23.0%)、イギリス(7.1%)、イタリア(6.4%)、ドイツ(8.9%)と低いのに対して、フランスは38.9%と、思ったよりもベッドシェアをしている割合が多い印象を受けます。

インド(70.0%)、ベトナム(83.2%)、モンゴル(100%)と、アジア圏は欧米に比べて高い割合となっています。これは、必ずしも子供に対する自立心育成や個の重要性という考え方だけではなく、住環境や各国における夫婦のあり方の差を反映している面もあります。