教育は生涯賃金に影響する
この背景を考えると、大卒か否かによって生涯賃金に大きな差があることが挙げられるでしょう。実際、家計相談の現場でも、「せめて大学までは行かせたい」とおっしゃる親御さんが非常に多いです。生涯賃金のデータはいろいろありますが、高卒と大卒で数千万円におよぶ開きがあるとされます。子供の将来を心配する親なら、教育に熱心になることは無理もありません。この点でいうと、教育費は「かかる」というより、教育費を「かける」といえるかもしれません。
ところがその一方で、さまざまなアンケート結果で「理想の子供の数を持たない理由」のトップ1に挙げられるのが、子供を育てるのに高額の教育費がかかるといった経済的な理由です。何だか少し皮肉な気もします。
教育費は、かけたほうがいいのか
では、教育費はかけた方がいいのでしょうか?
教育費をかけて立派な大学を卒業しても、罪を犯して逮捕される政治家や官僚は後を絶ちません。教育費をかけなくても芸能界や経営者として成功する人も多くいます。もちろん優秀な学歴ですばらしい方もいらっしゃるし、学歴がなく犯罪に手を染める人も多くいるでしょう。
いささか極端な例を出してしまいましたが、何が言いたいかというと、学歴よりも大事なのは、人としての“人間力”みたいなものではないかと素朴に思うのです。
中室牧子『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)によると、米国で1960年代から非常に長く続く研究から、学力もさることながら、それ以上に人の学歴・年収・雇用などの面で大きくプラスに影響しているのは、「非認知能力」なのだそうです。
非認知能力とは、「忍耐力がある」とか、「社会性がある」とか、「意欲的である」といった人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。さらに著書では、非認知能力で重要とされるのが「自制心」と「やり抜く力」の2つであると書かれています。
確かに、社会に出れば、いろいろなことに遭遇しますから、授業で習ったことだけで事足りるわけではなく、その場でどう考えるかとか、周りの人たちとどううまく付き合っていくかとか、ときには耐えないといけない場面もあるかもしれません。そうしたときに、折れない心のような柔軟性や強い意志みたいなものが、その人の人生に大きく影響を与えるのでしょう。感覚的にも納得できる結果ではないでしょうか。