外食の醍醐味は「自宅でできない味と空間」

以前、グループ企業が飲食店も展開する大手飲料メーカーの事業会社(子会社)社長に、「外食店がお客に約束する、大切なことはなんですか」と聞いたことがあります。その時の答えは次のような内容でした。

「最も大切なのは、自宅では真似できない味と雰囲気を提供することです。例えば、これだけ家庭向け食材が進化したのに、人気寿司店の味と雰囲気は自宅で再現できません」

この視点で考えると、鍋料理は自宅でも再現できますが、火鍋はなかなかハードルが高い。そもそも火鍋専用の鍋を持っている人は少ないでしょう。

空間もそうです。ひとつ言えるのは、あまり非日常的ではなく“異日常”(ふだんの生活とは異なる日常)が支持されるようになったこと。サービスの視点では、押しつけ感がある接客は好まれない。その意味で、自分で「カスタマイズ」できるタレはいいと思いました。

火鍋人気がこれからも続くかは断言できませんが、前回の「なぜタピオカは3回もブームを巻き起こしたか」で触れたように、中華圏の料理は日本の消費者(日本人に限らず国内で暮らす消費者)には親和性が高い一面があります。そんなことを考えた会食となりました。

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高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト/経営コンサルタント

1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。