新しい世界で待っていた厳しい現実

料理学校では、短期間で集中して理論的に知識と技術を学び、フードコーディネーター、食育インストラクターなど、4つの資格を取得。とはいえ、就職のあっせんまでは期待できず、修了後の仕事の口は自分で探すしかなかった。

ハローワークで仕事を探すも、かろうじて見つかったのは、フードコーディネーターのアシスタント。24時間体制で先生をサポートし、お給料は交通費のみという内弟子のような条件だった。自分でなんとかするしかない――。そう考えた櫻井さんは、レンタルスペースを利用して料理教室を開催してみたものの、すぐに壁にぶつかった。教室に来てくれる人がいないのだ。

「アパレル会社で勤務していた時には、ブランドに知名度があったので、お客さんは向こうから来てくれました。このとき、私は初めてお金もコネも実績もない個人が、人を集めることは難しいということを痛感したんです」

櫻井さんは、自信をなくしなすすべを見失った。

苦労人のカフェ・オーナーとの出会いが転機に

そんな櫻井さんに手を差し伸べてくれたのが、「MK-CAFÉ」に勤めていた幼なじみだった。櫻井さんの力になろうと、オーナーを紹介してくれたのだ。このオーナーとの出会いが、その後の櫻井さんを大きく変えるターニングポイントになった。

鯖バーガー。ヘルシーで忙しい女性にも喜ばれている。

オーナーは苦労人で、その人生経験は壮絶なものだった。志半ばで亡くなった兄との約束を果たそうと「MK-CAFE」をオープンしたものの、ほとんど客が入らない期間が続き、3000万円の累積赤字を抱えた崖っぷち状態に。そこからSNSが持つ可能性に希望をつなぎ、起死回生の集客を成功させた実績から、SNSプロデューサーとして頑張る人を応援しているのだと耳にした。

「食を通じて、人を喜ばせる仕事がしたい」と語る櫻井さんの熱意を受け止めたオーナーは、店の主力商品である鯖バーガーの新メニュー開発という大役を任せてくれた。さらに、ピンチをチャンスに変えるための切り札として、SNSを活用したセルフブランディングで、自分自身をタレント化する方法をアドバイスしてくれたのだ。