※本稿は黒川伊保子『夫のトリセツ』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。
「相談」するから、「ノー」と言われる
意地悪な夫でなくても、夫に「仕事したい」「子どもを塾に入れたい」などと相談すると、たいていの場合、ブレーキをかけられる。危機意識の強い男性脳(とっさの危機回避力が低いので変化を厭う)は、問題が起きない限り(食べていけない、学校の授業についていけない)、現状維持を望む。
このため、私自身は、夫に相談する、ということがほとんどない。
会社を辞めて起業するときも、「再来月、会社を辞めて、起業するね」と報告をしただけ。もちろん、その利点(幼い息子のそばにいられ、家事をする時間が増える)を強調し、マネープランも説明したけれど。「どう思う?」とは聞かなかった。そう聞けば、ネガティブな答えが返ってくるに違いなかったから。慎重派の彼は、我が家のブレーキ役なのである。このとき、ブレーキは欲しくなかった。
夫に何か提案するときは、どんな些細なことでもネガティブな理由は使わない。「今の会社が嫌だから、もういられない」という言い方をすると、その問題解決をしようとして食い下がってくる。「ベンチャーブームで資金が作れる見込みが立った。今がチャンスだから、やってみるわ」と笑顔でプレゼンテーションするしかない。
もちろん、独立に当たっては、私も不安だった。しかし、その不安を夫にぶちまけたら、夫は強いブレーキになってしまう。私自身の不安は、自ら乗り越えるしかなかったのだ。