若者の消費は「見えないモノ」に向かう傾向

【原田】次は物欲について聞きたいと思う。皆、あまり物欲がないようだけど、そうは言っても買い物に行くこともあるでしょ? 何を買っているのかな。

【丹羽さん】友達と買い物に行くと、「おそろいの服を買おう」などと盛り上がって、必要じゃなくてもつい買っちゃうことがあります。それでムダ買いしている感覚はありますね。

【原田】そうした行動は「同調消費」と言われているよ。おそろいの格好でテーマパークに出かける子もいるし、色やトップスなどをそろえる「シミラールック」も話題になっている。その服を所有することよりも、おそろいで歩く体験が楽しいみたいだね。

【井上くん】僕は買い物に行くこと自体あまりないですね。服も「これがほしい」っていうのはあまりないし、高価なモノ、例えば車も持ちたいと思ったことがないです。

買い物に行くこと自体少ないという井上くん。

【塩田くん】僕も服や車にはあまり興味がないです。そういうモノよりも、友達と幸せな時間を過ごすことにお金を使いたいと思っています。

【原田】若者の車ばなれも最近よく言われているね。昔は、4畳半のアパートに住みながらお金を貯めてフェラーリを買う人もいて、「4畳半フェラーリ」っていう言葉もあったぐらいなんだ。昔の若者は、かっこいい車を所有することにそれほど憧れていたわけなんだけど、今はまったくないんだね。

【山田くん】僕は将来的には車がほしいです。人とは違う、かっこいい外車を買いたいですね。自分が「価値がある」と感じた車を、高いお金を出して買うわけだから、それは自分のアイデンティティにもつながると思います。まだ車の知識が少ないので、あくまで憧れでしかないんですけど。

【浅見さん】私も車がほしいです。今はレンタカーやシェアリングを使う人のほうが多いけど、移動に使うなら所有していたほうが便利だから。軽自動車に乗っていた時に割り込みをされてヒヤっとしたことがあるので、安全性が高くて、割り込みされにくい高級車がいいなと思っています。

見栄、メンツ、モテ消費は過去のもの

【原田】車がほしい子の中にも、憧れ派と実用派がいるわけか。僕たちの世代が車を選ぶ基準は、見栄、メンツ、女性からのモテの3パターンだったものだよ。どの動機もこの20年でほぼなくなったみたいだけど(笑)。男子は、かっこいい車に乗っていればモテるとは思わない?

【塩田くん】それで寄ってくるような女子はちょっと嫌ですね。僕にじゃなくて車に恋してるわけだから。

「“かっこいい車”に寄って来るような女子はちょっと……」

【原田】山田くん以外は、車をツールの一つとして見ているようだね。友達と一緒に移動する手段としても、東京にいるとそれほど価値を感じないのかもしれない。そうなると、メーカーがいくらかっこいい車を作っても、若者の購買意欲にはつながらないということになりそうだな。

若者たちの消費対象は、モノから体験へと確実に変わりつつあるようです。最近は地方の若者を中心に海外ばなれも進んでおり、若者の三種の神器が「車、海外旅行、お酒」だった時代は過ぎ去ったと言えるでしょう。では、彼らは何にならお金を出すのか。今回の座談会では、新しい体験ができる場や友達と快適に過ごせる場、人間関係の構築など「見えないモノ」に使っているという話が出ました。今後、若者向けの商品やサービスを考えるにあたっては、こうした消費行動を念頭に置く必要があると思います。

写真=iStock.com 構成=辻村 洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。信州大学特任教授。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。