スウェーデンでは育休経験が採用で有利になる

私は本稿で育児休「暇」ではなく、育児休「業」という言葉を使っていますが、それは育児が決して暇を持て余すようなものではないと思っているからです。私のように家事が苦手だった者にとっては、育児とそれに伴う家事は、大変な「業務」でした。そもそも、赤ちゃんには言葉が通じません。大人の世界でも、ワガママで話の通じない人はたくさんいますが、言葉が理解できるだけマシなのです。

現にスウェーデンでは、育児休業の取得経験を本人の資質として評価する企業が多いのです。図表2はスウェーデンの社会保険庁が2014年に実施したアンケートの結果ですが、これによると、育児休業を取得した経験が採用の際に有利になるかという質問に対して、実に45%の企業が「必ず」もしくは「非常に」有利になると回答しているのです。

このように育児が社員の資質を向上させる経験であると考えれば、企業は育児休業に伴う臨時雇用や配置転換にともなう手間や費用を、人材育成のためのコストとみなして、前向きに捉えることができるようになるのではないでしょうか。

「イクメン」がなくなる日を目指して

以上は、「育児休業を取得されても、うちのダンナはどうせ子どもを放ったらかしで何もしない」とボヤいている女性にとっては、遠い国の楽観的な絵空事に過ぎないかもしれません。けれどもスウェーデンでは、もはやそういう男は女性から相手にされない時代が来ています。

今回の施策によって、日本の多くの公務員パパが育児休業のメリットを認識し、それがやがて民間企業の動きへと波及していってほしいです。そして、いつか父親が育児休業を取って育児を行うのがごく普通のこととなり、「イクメン」という言葉が消えてなくなる日が来ることを、切に願っています。

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鈴木 賢志(すずき・けんじ)
明治大学国際日本学部教授・学部長

1992年東京大学法学部卒。英国ウォーリック大学で博士号(PhD)。97年から10年間、ストックホルム商科大学欧州日本研究所勤務。日本と北欧を中心とした比較社会システムを研究する。