「外国語は母国語を習得してから」というのは日本だけ

日本では、外国語の学習は母国語を習得してからの方がいいという議論もあります。欧米でも母語が強い方が第二言語も強くなるという考え方は一般ですが、シンガポールでは、同時並行に学ばせている家庭が一般的で、英語しか話さないアメリカ人であれば中国語で授業を進めるクラスに幼少期から入れる家庭もあります。

日本人以外から、外国語は母語を確立してからという話を聞いたことはほとんどありません。むしろ多くの富裕層が幼少期から複数言語を学ばせています。シンガポールなどの多民族、多言語国家では、いや応なしに街などで複数言語が入ってくる環境なので耳を塞ぎ続けることもできないこともあるでしょう。英語と中国語やタミール語などのバイリンガル教育が一般的なシンガポールが、国際学力テストの3分野で一位という結果を見れば、早期からの多言語教育が悪いとは言えないのではないでしょうか。同国は、一人当たりGDPも日本より高く、稼げる人材を生み出していると言えます。

日本で重視されがちな、字を綺麗きれいに丁寧に書くという発想も英語であまりなく、書き順やスペルが完璧ではなくても怒られたりはしません。将来、ビジネスで使うことを考えると、まず「美しい日本語」から、といった曖昧なことにこだわり過ぎて一つの言語を完璧にすることに集中するよりは、幼少期からもう一つ言語を覚える方が効率的と言えるでしょう。シンガポールのように、公教育の中でもっと早い時期から外国語を学ばせた方がよいのではないでしょうか。語学教育の質の改善も必須でネーティブスピーカーによる授業を増やすべきでしょう。

習い事も半端ないが、気になる学費は…

シンガポールでは中流家庭でも幼稚園から習い事を週6回くらいさせているので子供を行かせたくてもアポイントが取れないこともよくあります。5歳児のスイミングを見ても、クロールで往復ができる子と溺れそうな子とでかなり差があります。娘の場合、2歳から触れさせていたダンスと音楽と水泳などの運動だけがかろうじてインター校で真ん中くらいを維持できています。やはり、勉強熱心なアジア富裕層が多い学校に入ると、周りが勉強も習い事もすごくやるのでやらざるを得なくなります。

ただし、学費は非常に高額です。米系インター校の学費は、日本では250万円程度ですが、海外ではさらに高く、日本円で300万円以上かかる場合もあります。加えて、バス代、給食代、ESLに数十万円、習い事や家庭教師に数十万円と一人の子供にかかるお金が400万円を超える場合もあるのです。

インター校に入れる場合はこうした細かい出費にまで気を配るべきでしょう。また、外での習い事を最小限に抑えたいのなら、あえて詰め込み式の学校を選ぶ方が学校で学んできてくれるので経済的な負担は少ないでしょう。

何が子供の将来にとって一番よいかを判断するのは難しいところですが、現実として、教育のグローバル競争は恐ろしいほどに進んでいます。少子高齢化などから今後の経済成長が難しいと思われる日本に留まっていたら生活水準を維持することも難しい時代がくるかもしれませんし、今後は中国人やインド人と国際競争をしていく必要があるわけです。保護主義の日本で生活をしているとこのようなダイナミクスを感じる機会は少ないかもしれませんが、お金に余裕がある家庭で、子供を世界を股にかけるような人材に育てたいなら、どこかのタイミングで海外に出すなどして、世界標準の教育を肌で体感すべきではないでしょうか。

写真=iStock.com

花輪 陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年からシンガポールに移住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』など著書多数。