中華系やインド系は外で詰め込んでくる

「遊び中心で大丈夫だから」という言葉を信じて、学費も高いのだし、教育は学校に任せてよいのかなと思っていました。入学したばかりの3歳の頃はバスで長距離を移動するだけでも大変なので無事に戻って来てくれたらそれでいいだろうと考えていたのです。

しかし、小学校入学前の5歳にもなると、外で勉強させている家庭とそうではない家庭とで大きく水を開けられていたのです。担任の先生との面談で子供の英語力について詳しく聞いてみたところ、このままでは少人数の特別クラスに行かなければならないだろうと言われました。英語がネーティブではない日本人や中国人の場合、ESL(English as a Second Language)と呼ばれる少人数のクラスに入ることはごく一般的なのですが、娘は1歳からシンガポールにいて普通に会話できているので大丈夫だろうと高をくくっていました。しかし、ライティングやリーディングは学校外で練習をさせないと自然と身につくものではなかったのです。

担任に根掘り葉掘り聞いて見ると、クラスで一番文章が書ける子の日記を持ってきました。多くの生徒が1日の出来事を絵で表現しているのに対して、その生徒は正確なセンテンスで文章を数行書けていたのです。しかも数カ月前に上海から来たばかりの中国人。ネーティブスピーカーの中でもアルファベットが全く書けない生徒もいるにもかかわらずに。もちろん、日本でも未就学児の場合、日本語がどこまで書けるかは個人で大きな差はあります。しかしこの生徒の場合、中国育ちで英語はネーティブではなく、両親も英語が上手ではないのです。

なぜそこまでできるのだろうと両親に聞いたところ、「上海ではもっとプレッシャーがすごかった。以前の学校では1位では全くなかった」と言うのです。上海のインター校はシンガポールのインター校よりも一般に学費が高いですから(シンガポールも日本よりは高いです)、上海の平均賃金を考えると、インター校に行かせるのは超富裕層になります。

どうやって英語を教えたのかを聞いたところ、学習アプリで全部やったと言います。別の中国人家庭は、5歳から家庭教師をつけていると言い、よい先生を紹介してくれました。その教師も「Raz-kids」というアプリをやるようにアドバイスをくれました。このアプリは日本でも多くのインター校で使われているようです。

中国語ができないと子供が不利な境遇になるといわれる同国のローカル学校に通わせるシンガポーリアンの友人も2歳から子供に中国語の家庭教師をつけているそうです。その結果、第一言語の英語よりも中国語の方が書けるようになったそうです。だからといって英語教育に支障が出ることもなく、5歳児で大変流暢りゅうちょうに話しますし、簡単なフレーズも書けるようです。

基礎的な語学力だけでなく、英語でのディスカッションでも個人差がついており、インド系の子供などはすでに論理力が高いように見えます。5歳でも重力について説明をしたり、意見が相反するときにどのような対処をすればよいのかなど意見を出しています。

シンガポールとはいえ、中華系もインド系もそれぞれに第一言語があり、英語は第二言語です。日本人が日本語を学ぶのと同じようにそれぞれの第一言語である北京語やタミール語を学んでいます。一方で早期から第二言語をしっかり学ばせることによって、大きな差が出ているので身近に接していると焦りを覚えるほどです。