配偶者手当は日本経済にマイナス効果
実は企業が支給する配偶者手当の存在がパートで働く妻の就業調整につながっているとして、厚生労働省は2015年12月に有識者による「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」を開催している。その報告書ではこう述べている。
「マクロ経済的に見ると、「就業調整」が行われるということは、「就業調整」を行っているパートタイム労働者の人的資源を十分に活用できていないということであり、生産年齢人口の減少に伴い労働力人口が減少することが見込まれる日本社会においては、看過できない問題である。このように、就業調整は、女性がその持てる能力を十分に発揮できない要因となる可能性があるとともに、日本経済全体にとっても人的資源を十分に活用できない状況を生じさせるなどマイナスの効果を与えていると言うことができる」
配偶者手当の存在が日本経済にマイナス効果を与えているというかなり厳しい指摘だ。だが、企業の基準となる配偶者控除の「103万円のカベ」が存在する以上、企業だけに見直しを求めるのは一方的すぎるだろう。実際に報告書でも「税制、社会保障制度と併せて見直しを進めることが求められる」と述べていたが、結局、前に言ったように政府は配偶者控除の廃止に踏み切っていない。
なぜ政府は配偶者控除を廃止できないか
なぜ、政府というより政治家は配偶者控除を廃止できないのか。実は民主党が政権を取った2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)では「配偶者控除を廃止し、子ども手当の財源に充てる」と明記していた。それに伴い2011年度税制改正では縮小も検討されたが、主婦層の反発が予想されるという委員の意見がまとまらず、引き続き検討課題とされた。2012年5月には、当時の民主党の小宮山洋子厚生労働大臣が国会で「働き方や生き方に中立でない制度は改めようと言っている。検討を急ぐべきだ」と発言。配偶者控除の廃止を見直しの議論を加速させる考えを示していた。
だが、その年の総選挙で政権は自民党に交代。第二次安倍政権が発足したが、自民党の「J-ファイル2013総合政策集」(2013年6月)では、配偶者控除を維持すると明記している。つまり、自民党政権になって配偶者控除の廃止は遠のいたことになる。それでも前述したように安倍首相が女性活躍を掲げて見直しを指示したが、結局、税制改正では微修正に終わっている。