ライバルとの比較が有効に働く条件とは

身近にいる人をライバルとして定め、競い合うことで力を伸ばすというのは、勉強や仕事で成果を出すために有効な方法ではあります。しかし、それが正しく機能するのは自己肯定感が高まっているときのこと。

「偏差値55だった私が勉強して、58になった。よくやった。これからまたがんばろう」と自分自身を認めることが重要です。そのステップを踏まず、「でも、Aくんは65だから」と比較してしまうと自己否定が始まってしまいます。

「認めてもらいたい!」気持ちに要注意

過去のトラウマや劣等感により、自分で自分のことを前向きに評価できないとき、人は周囲から認められたいという承認欲求が強くなります。人から承認されることによって、存在の安心を得ようとするのです。

承認欲求は誰もが持っている欲求です。ところが、自己肯定感が低いままでは、自分で自分を認められないから心が満たされず、欠乏感によって他者からの評価を求めてしまうのです。

すると、行動が依存的になってしまいます。勉強なら、教師や親の求めに応じてがんばる状態です。とにかく、教師や親に認められるためにがんばるのです。仕事なら、「あなたのがんばりが必要だ」「このノルマを絶対に達成しろ」と言われ、ブラックな環境でも、「認められよう」とぎりぎりまで耐えてしまいます。子育てなら、良い小学校に入ることが、良いお母さんとして認められることだと思い込み、子どもの考えや夫の状態もかまわず、がんばってしまいます。

目標が達成できても充足感が得られない

仮にこの状態で学校の成績が上がったり、職場でのノルマをクリアしたり、良い小学校に子どもが入学することができたとしても、スタート地点で「自分で自分を認めていない」ので充足感は得られません。むしろ、「次は何をしたらいいのだろう?」とまた周囲に指示を仰ぎ、そんな自分に無力感を覚えて、自己肯定感をさらに低くすることになってしまうのです。

行動の動機が「やりたい」ではなく、「承認欲求を満たすため」になったままでは、いつまでもやらされ感から脱することができず、結果を出しても自己肯定感が低下する負のスパイラルに陥ってしまいます。また、エスカレートすらすることがあります。

ここで注目したいのは、「認めてもらいたい!」気持ちが強くなったら、自己肯定感が低くなっているのだな、と気づくことです。そしてムリに高めようとしないことです。それだけで自分の状況を冷静に見つめることができるのです。