意外と重い「無料」の間接的な損失

また、このように余計なものや割高なものを買わされるというのはいわば支出が増えるという、「直接的な損失」につながるわけですが、「間接的な損失」も生まれます。それは無料の品物であればもらわなきゃ損とばかりに家に持って帰ってくるうちに家の中にそうしたものが溢れかえってしまうことです。何もしなくても物が増えるのに、無料でもらった品物は放っておくとどんどん増殖していくことになります。大豪邸に住んでいるのであればともかく普通に狭い日本の家に住んでいると使わないもの、不用なものまでも無料で貰ったからといってとっておくのはスペースの無駄で案外馬鹿になりません。次に「断捨離」する時まで家には無駄なものがあふれることになりかねません。

昔の人のことわざである「タダより高いものはない」というのは良く言ったものです。全くそのとおりで、無料につられて得したつもりが結局損をしてしまっていたり、もっと大きな利益を逃してしまったりすることに気を付けるべきでしょう。

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大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。