「無料相談窓口」に騙されてはいけない
無料という言葉のインパクトがあまりにも心地良いために警戒心を解いてしまうということです。典型的なのは民間企業でありながら「無料相談窓口」を開いているところです。例えば保険や投資などの金融商品を相談しようとすれば、本当に正しいやり方は専門性を持ったファイナンシャルプランナー(FP)の人にしかるべきフィー(相談料)を払って相談すべきです。ところがその相談料を払いたくないために無料で相談を受けてくれる窓口につい行ってしまいます。
でも「無料」ということは一体どこから収入を得ているのか? をしっかり考えるべきです。それは紛れもなくあなたがこれから購入しようとしている金融商品の手数料なのです。多くの金融機関は窓口で相談無料とうたっていますが、それは結果として高い手数料の金融商品を買ってもらうためと考えた方が良いでしょう。 米国デューク大学のダン・アリエリー教授は、その著書『予想どおりに不合理』の中で、こうした心理について「ゼロコストのコスト」と表現しています。
金融商品に限りません。例えばテニススクールが主催する無料のレッスンを受けたらおそらく高い確率でそのスクールに入ることになるでしょう。「無料」というのは顧客の抵抗感を無くして商売に持ち込むためには非常に効果的なマーケティング手法なのです。入口がいくら無料でも結果として割高の商品やサービスを買わされてしまったのでは、まさにこの「ゼロコストのコスト」を負担するということになりかねません。
「あと〇〇円で送料無料」のカラクリ
また、形は少し違いますが、こんな無料のお誘いもあります。例えばネットショッピングで3000円の買い物をした時に、「もう1000円買えば送料を無料にします」という案内が出るような場合です。
送料が無料になるのなら、どうせいずれ買うのだからついでにストッキングとか余分に買っておこうかということで4000円の買い物をしたとしましょう。この場合、単純化するためにこのお店は商品原価と経費の合計が平均で4割だとします。つまり売ったお金の6割が利益になるという構造です。この場合、送料が400円とすると、3000円の買い物をしたお客は送料も含めて3400円を支払います。4000円買った場合は送料無料ですから4000円払うだけです。つまり600円余分に負担はするけど、1000円分の商品が余分に手に入るのだから、得をする! と思いがちです。
ところがお店も別に損をしているわけではありません。お客が3000円買ってくれた場合のお店の利益はその6割ですから1800円です。一方、お客が4000円買ってくれると、お店の利益は4000円×6割で2400円になりますが、送料の400円はお店が負担するので、差引は2000円です。つまり送料を負担したとしてもお店の利益は増えるのです。
さらに送料を顧客が負担するのと違って、お店側が負担するのであれば、件数は相当増えるでしょうから、配送業者と交渉して、値引きをすることも可能になります。だとすれば送料無料を狙って買い増しするお客が増えれば増えるほど、利益は出やすくなるでしょう。