「初月無料」「無料体験」には特に要注意

ところが本来は有料で提供されるべきサービスや商品までもが無料で提供されることがあります。その多くは最初だけ無料だが、体験して気に入ったら商品やサービスを買ってもらうというスタイルのものが多いようです。でもこういう場合、後からもらう代金の中に最初の無料体験分のコストも上乗せされていると考えるのが自然ではないでしょうか。

中には無料体験だけして、購入しない人だっているでしょう。だとすれば、その人達に提供した分のコストは実際に購入した人が負担していると考えてもいいはずです。もし買おうと思っている商品やサービスが決まっているのであれば、むしろ最初は無料だから利用しないと損とばかりに無料体験付きの商品やサービスを利用しない方がいいのかもしれません。

なぜ、人は「無料」に惹かれるのか

しかしながら、無料ビジネスは大流行ですし、消費者にとっても人気があります。なぜか「無料」という言葉に私たちは惹かれます。この理由を行動経済学で考えてみると非常に面白いのです。

なぜ「無料」という言葉がこんなに私たちの心に響くのでしょうか? 実はそれは「選択」と関係があります。私達が日常、何かの買い物をしたり何かのサービスを受けたりする場合は、その対価を支払わなければなりません。当然、品物やサービスは一つではなく、様々なお店や会社が提供しています。テレビも自動車も洋服も色んな商品がありますし、マッサージやエステのサービスを受けようと思うと、街中には至る所にサロンがあります。私たちはそういう多くの商品やサービスの中から一つを選ぶことになります。

実はこの選択するという行為が心理的にはかなり負担なのです。私達が意識していない心理の中に、選ばなかった中にもっと良いものがあったのではないか? 自分が買ったものは値打ちが低くそれに使ったお金は損だったのではないか? という疑心暗鬼な気持ちが横たわっています。

一方、「無料」の場合はこれがありません。なにしろ“無料”なのですから、金銭的に損をするということがありません。「所詮、タダなのだから良くても悪くてもまあ損はしないよね」ということになります。

ところがここに大きな落し穴が待ち構えているのです。