環境の変化によるストレスは業務以上
25年といえば4半世紀。相談者さんは、まさに激動の時代を営業として駆け抜けてこられたのですね。タフさを求められると同時に、とても疾走感のある日々だったことでしょう。仕事の内容以上に、日々の時間の流れ方や周りの人間関係、すべてが変わってしまったことに戸惑う気持ちはよくわかります。
変化というものは、それがよいことでも悪いことでもストレスになると言われます。変化によるストレスは、不慣れな業務以上に心に負担をかけるもの。結果、本来なら楽しみのはずの余暇でさえ、喪失感や焦りを感じるだけの時間になってしまい、前向きになることも難しいのだろうと思います。
まずは、悩んでいる今の自分を否定しないことが大切です。そして、少し引いて観察してみる視点、いわゆる「メタ認知」を持って自分を客観視してみてはいかがでしょうか。
例えば90歳まで生きるとしたら、今悩んでいるこの瞬間は人生の通過点の一つでしかありません。私自身、これまでのキャリアは紆余曲折ばかりでした。どんな職種・業務に携わるかを「選んだ」と言える経験がないまま、その時々で任された役割をやってきました。キャリアの積み方としてはかなり遠回りですが、ただ、その分たくさんの景色を見ることができたと思っています。
自分が持つ「営業経験」の価値に気づいて
そうした経験をもとに、相談者さんには2つのことをお伝えしたいと思います。1つめは「この仕事は何につながっているの?」と考えて業務に生かすこと。仕事は、ささいに思えるものでも必ず会社のビジョンにつながっています。どんな業務にも意味があり、会社にとって大きな価値があります。社長を務める者として、これは間違いないと断言します(笑)。
「この商品を通して社会に貢献したい」といったビジョンは、企業にとって営利以上に重要な意義を持ちます。そうしたビジョンを実現する上で、相談者さんの今の業務はどんな役割を果たしているのでしょうか。目の前の業務を、少しだけ広い視野から見つめてみてください。
役割は、営業職だった時とは違うかもしれません。けれど、それもまた会社にとっては価値があるのです。サポート職やスタッフ職の中には、すばらしいマインドを持って業務に取り組み、チームに刺激を与えている人もたくさんいます。そうした人たちに共通するのは、「自分の仕事は何につながっているのか」が見えていること。
目の前の業務の先を見ているので、課題に対して先回りでき、かつ一つひとつの仕事を着実に、期待を超えるレベルでやり遂げる。組織はそうした人をリスペクトします。頼れる人として自然と情報が集まるようになるので、彼らは結果として“存在感のあるかけがえのない人材”になっていきます。
相談者さんの営業職としての経験は、今の業務においても大きな強みになるはずです。営業未経験者が知らない世界を知っていることは「価値」であり、部内での存在感にもつながります。加えて、会社における自らの役割をしっかり理解していれば、会社は「もっと活躍させたい」と思うはず。そう考えると、今回の異動はチャンスとも言えるでしょう。