PTAも強制されない

私立小の働くママを受け入れる体制は、学童保育の他にも一体どんなことが挙げられるのだろうか。

「細かいところでいうと、学校に購買部があり、そこで文房具などを子供自身が買えることはありがたいですね。あと、学校からのお知らせが、公立小は“紙”なのに対し、私立小は“メール”なので助かっています。また、私立小は親同士の付き合いが面倒なイメージがありましたが、学校側が親の集まりを推奨していないため、決してそんなことはありませんし、働く親の負担を考えてPTAの参加も強制ではありません。横断歩道の旗持ちなど、公立小のほうがお手伝いで学校へいく頻度は高かったと思います」と山下さんは語る。

共働きが入試で不利になることはないが……

共働き世帯が65%(内閣府「男女共同参画白書 平成30年度版」より算出)にも及ぶ中、共働きで小学校受験に挑む家庭は珍しくなくなってきた。一般的に私立は授業料が高いといわれているが、中学受験にかかる費用を考えると一概にそうとは言い切ることはできない(高校・大学も国公立と考える場合は異なるが)。

中学・高校・大学受験とは違い、「家族力」が問われる小学校受験。親が家庭にいて、しつけをしたり、勉強を見ることができる専業主婦家庭が断然有利だと思われがちであったが、共働きだからといって入試で不利になることはない。

唯一「不利」なことは「時間のなさ」であるが、子供と関わる時間は、“量”より“質”で勝負。少ない時間でいかに子供と密度の濃い関わりをすることが大事なのではないだろうか。効率的な時間の使い方や、ゴールに向かって逆算して取り組むこと、弱点克服のための戦略など、仕事で培ったスキルを活かして、働くママが小学校受験に挑戦してみることは、1つの選択肢に入る時代になった。

ただそうは言っても、いざ小学校受験の塾へ行くと、仕事のペースを落とすように言われたり、願書にはフルタイムで働いていることを大っぴらに書くことを遠慮するように指導されるのだ。まだまだ働くママが小学校受験をすることは、ハードルが高いのが現実である。次回は、共働き家庭の小学校受験対策や具体的な方法論を経験者に迫る。

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二宮 未央(にのみや・みお)
ライター

幼児期をニューヨークで過ごし、帰国後に小学校受験を経て私立聖心女子学院初等科へ入学。私立聖心女子専門学校保育科を卒業。幼稚園教諭を経て、2007年に結婚。出産・育児に入る。主婦として家事全般や2人(長男、長女)の子育てにいそしみつつ、保育士としても活動。保育園新規開園の立ち上げも経験する。16年からエアー・シンフォニーに所属。17年、「宣伝会議」の編集・ライターコースの卒業制作で最優秀作品賞を受賞。著書に『小学校受験バイブル』(あさ出版)がある。