仕事を辞めたところで育児の大変さは変わらない
しかし、私は、子育てをしながら、仕事を辞めたところで育児の大変さは変わらないということを実感しています。一時的に仕事の効率が悪くなることはあります。それならばと、仕事をいったん休む、または変えるという選択肢はあるとは思います。ただ、中長期で考えると、働き続けることが家計における一番のリスク管理になります。
実際、同調査では、多くの女性が一番下の子どもが未就園児の時は専業主婦、中学生以降は正社員でフルタイム勤務を希望していながら、現実は一番下の子どもが中学生以降も4割が専業主婦であり、正社員フルタイム勤務は2割にとどまっているという結果が出ています。
子どもにとって親の役割はなんだろうと考えたとき、私は、補助輪なのだと思い当たりました。これからを生きる人が、これまで生きてきた人を超えていくためのお手伝い。そのための環境づくりをする役割があるのだと思います。
子育てにはより多くの時間が必要な時期も実際にあります。
ただ、それを、仕事を辞めて捻出することはリスクが高いと思います。
とくに我が家の場合は、私が43歳のとき、妻が42歳のときに娘が生まれているので、最低でも娘が成人する63歳、62歳までは働かなければなりません。大学を卒業するまでなら、65歳まで。できれば娘が30歳になるくらいまでは、私も真っ当に働いていたいと考えています。
稼ぐことは家事のうち
家庭を安定的に存続させるために、稼ぎは必要です。
収入を得ること、これも立派な家事のうちの一つだと言いたいのです。
家事・育児がそうであるように、稼ぐことについても、「男だから」「女だから」を問いません。稼ぐことに向いているほうがより稼げばいいし、時期によって家庭内で役割分担があってもいいと思います。
「女性は家、男性は外」という考え方の時代もありましたが、いまの時代にはそぐわないでしょう。男性が家にいて女性が働くという選択肢もあり得ます。でも、それでは、「女性は家、男性は外」という価値観が入れ替わっただけにすぎません。ジェンダーの役割を互いに押しつけることなく、家事・育児を協力しあうのと同じように、収入の面でも互いに支え合うこと。
夫も妻も稼ぐ。それが家庭運営上のリスクヘッジになります。
私たちは新しい時代を生きているのです。「関白宣言」はお金持ちの論理です。
写真=iStock.com
1974年札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学専任講師。2020年4月より准教授。著書に『僕たちはガンダムのジムである』『「就活」と日本社会』『なぜ、残業はなくならないのか』『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』ほか。1児の父。