家事・育児はどこまでやるべきか

そもそも、家事と育児は、どこまでやったら10割になるのでしょうか。

雑誌『AERA』が提供している「共働きの家事育児100タスク表」というものがあります。家事・育児に関するタスクを100個列挙しているのですが、「朝食をつくる」と「献立を考える」は別のタスクとして挙げられています。よく見ると、「親戚と連絡をとる」「オムツに記名する」「保育園グッズを繕う」など、意外と気づかない細かい家事も丁寧に取り上げられているという印象です。

実際に私も確認してみましたが、3分の1に○がつき、3分の1に△がつき、3分の1に×がつきました。結構やっていると自負する私でも、実際にいつも自分が担当している家事・育児は3割でした。

△は、妻がやることもあるし、私がやることもある項目。これを「やっている」とみなせば、5割は超えるので、我が家はおよそ半々の分担ということになるでしょうか。

この手のタスクの細分化・見える化は、家事・育児の領分をはっきりさせるうえでは有効だと思います。家事・育児のタスクの多さがわかり、働き方も含めた24時間の使い方を意識するきっかけにもなるでしょう。

家事・育児は夫婦で同等に担うべき

ただし、これが「ほら、男性はなにもやってない!」「女性にばかり押しつけて!」といった、男性を仮想敵にする道具にされてしまうのではないかという危惧があります。

一般論として、たしかにこれまで、仕事と家庭の両立という面で、男性が既得権としてラクをしていた部分はあると思います。女性ばかりが担っていた側面もあるでしょう。でも、そこだけを強調して、ジェンダーの問題に落とし込んでも、家庭内の家事・育児分担問題は、なにも解決しないのではないでしょうか。

私は、家事と育児は、夫婦二人で同等に担うものだと思っています。同等と言っても、それは100の項目を数上50対50で分け合うということではありません。どちらにとっても難しいものは、家族以外の人に助けてもらったり、便利家電を導入したり、サービスを利用したりして効率化すればいいとも思っています。

そもそも、三世代同居が当たり前の時代ならまだしも、共働きの核家族が前提となったいま、夫婦だけですべてを取り回すことは難しいでしょう。

出産や母乳を与えることなど、一部の子育てに関わる行為で、女性にしかできないものはあります。だけれども、私の好きな料理は、男性でもできます。我が家では私が担っている「献立を考える」のが得意な女性もいるでしょう。

例えば、私は、洗濯はほぼしません。洗濯に対する自分の知識がまだ足りないと思っているし、なにより妻のほうが上手です。もちろん、状況によって洗濯機を回したり洗濯物をしまったりすることくらいはやります。お風呂上がりの娘に乳液を塗ったり、耳あかをとったり、つめを切ったりするのは、妻のほうが得意そうです。

個々人の強みを活かす

ここで間違えていけないのは、男性でもできるからといって、「男性がやるべきだ」という理屈にはならないということです。逆も同様です。「女性だから料理をするべきだ」という発想は危険です。

不平等感を解消するために役割分担を厳密にするのではなく、個々人の強みを活かした役割分担が、暮らしを楽しくする第一歩だと思います。

家事や育児は、家庭内のことです。男性がやるか、女性がやるかということ以上に、向き不向きで分担すればいい。できないことは、無理に引き受けたり押しつけたりしなくてもいいのではないでしょうか。

家事・育児の満点、10割の出来を目指さないことも、日々の生活の中で、じつは大事なことなのではないかと思っています。

私は料理が好きだから、料理を担当する。好きなので、自分の料理のクオリティは追及しますが、妻がつくった料理の出来に不満は言いません。それでよいのではないでしょうか。