現在44歳の人は、どれくらい年金が目減りするか

財政検証では、経済成長率や物価上昇率などの諸条件を変え、6つのケースを想定した将来の年金額が試算されていました。この際、給付時の現役世代の平均手取り収入に対し、年金額が何%に相当するかという「所得代替率」がさまざまな時期で明記されています。

結果をみると、現状(2019年)の所得代替率は61.7%であるのに対し、6つのケースすべてで2040年(現在、44歳の人が65歳になる年)には、目減りしています。

“目減り度合い”は6ケースでまちまちですが、54.3%(ケースI)~51.3%(ケースVI)でした。試算の諸条件については、ケースIからケースVIにかけて段階的に厳しく見積もられています。

この数値を見ると、何となく10%程度下がっている感じですが(もちろん「差」としてはそうなのですが)、「変化率」で捉えてみると、

ケースI 54.3÷61.7≒88.01%
ケースVI 51.3÷61.7≒83.14%

となります。つまり、所得に対し、年金の支給額は実質的におよそ12~17%減と読み取ることができます。

“繰下げのお得度”の変化をシミュレーション

およそ12~17%減って、それがかりに70歳まで繰下げ受給する(1.42倍)と想定すると、

ケースI 1×88.01%×1.42倍≒1.25倍
ケースVI 1×83.14%×1.42倍≒1.18倍

いかがでしょうか。

繰り返しですが、ここから社会保険料を納め、年金額次第では税金も課税されますから、65歳時点での年金額次第では、1.42倍のインパクトは小さくなることが分かります。

ちなみに、財政検証では、さらにその後の所得代替率の試算もありましたが、より低下していました。現在44歳よりも若い方では、より年金額が目減りする試算結果ということです。

ここではおもな注意点を挙げてみましたが、日本の公的年金制度は度重なる改定により、非常に複雑です。人(世帯)によって、細かい注意点はさらにあるかもしれません。

お若い方は繰下げするかどうかを決めるには早すぎるでしょう。目前に控えている方も、事前に年金事務所などで相談をしながらじっくり考えて、ご自身に合った受け取り方を検討していただきたいと思います。

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八ツ井 慶子(やつい・けいこ)
家計コンサルタント

1973年、埼玉県生まれ。生活マネー相談室代表。「家計の見直し相談センター」を経て2013年7月独立。個人相談を中心に執筆、講演を行う。著書に『お金の不安に答える本 女子用』など。