非加入による嫌がらせが日本各地で起きている

知り合いの母親にこの話をすると、副会長を知っていて、彼女はそういう人ではない、立場上そう言わざるを得なかったのだろうと同情していた。その副会長は、以前、硬派の役員につるしあげを受けて、精神性の下痢に悩んだという。2年ほどたって、この元副会長に直接会う機会があった。加入の電話についての話はしなかったが、PTAに関する話になると、意外なことに、彼女は私の考えにうなずき、PTAはおかしいと思っていると言った。

後になってわかったのだが「PTA主催の催し」は、年に一度のクラスのお楽しみ会だけだった。PTAは、町内会や青少年育成委員会に従属させられていて、「町ぐるみ運動会」や「夏休み早朝ラジオ体操」などのお手伝いをする。あるいは、運動会など学校の行事、用事に動員されるのである。

息子の小学校では、PTAの退会も認めていなかった。PTAが給食費を集めて管理しているので、非会員がいると迷惑ということが、理由の一つである。給食費は、学校が集めるべきものではないか。また、非加入だと、非常時の集団下校に入れてもらえないという話もあった。最近のケースでは、親が加入しないと、子どもに卒業式のコサージュや紅白まんじゅうをあげない、学校の情報を知らせないなどの嫌がらせが、日本各地でされているという。

結局、PTAには加入した。息子がいじめられたり、嫌な思いしたりするようなことがあって欲しくなかった。

巨大な国家組織なのに、法律がない

息子のクラスには、委員長、副委員長、広報委員、文化教養委員、スポーツ委員の役職があった。

区のレベルでは、杉並区立小学校PTA連合協議会(杉小P協)があり、7つの分区に分けられていた。各分区の中に、分区長、役員、総務専門委員、学級専門委員、地域専門委員、広報専門委員の8つがあり、毎年ローテーションする。さらに、杉小P全体としては、会長、副会長、特別委員長、総務専門委員長、学級専門委員長、地域専門委員長、広報専門委員長、会計、庶務などの役職があり、やはりローテーションで担当する。

会長の話では、2001年まで杉小P協に加入していない小学校は一つあった。それは、杉並区で最初にPTAを作った小学校で、最初に杉小P協から脱退した学校でもあったという。しかし、2000年夏に、プールで子どもが死亡する事故があり、その補償をめぐる交渉のために、杉小P協へ加入せざるを得なくなったという。それまで、区の教育委員会に陳情しても埒があかなかったが、「屈辱の思いで」2002年度から再加入し、杉小P協として交渉すると全く対応が違ったという。

子どもが死亡した事故で、区のレベルのPTA連合に加盟していなければ、交渉できないなど、絶対にあってはいけない。PTAには、準拠する法律がないというのも普通ではない。PTAは、日本最大の社会教育団体、かつ地域組織と言われ、現在、900万人近い会員がいるとされる。巨大な国家組織なのに、組織を律する法律がないのだ。