大雪のマンハッタンで日本人駐在員だけ出社
カルチャーの違いとして、どんな点が挙げられるだろうか。なぜ、日本人は大型台風が来ると分かっていても、出社を余儀なくされるのだろうか。または、自ら出社するのだろうか。
世界経済の中心地・マンハッタンには、名だたる日系企業が多数進出し、日本からの駐在員が日々働いている。東京や大阪の本社同様、米国の現地法人が、大雪やハリケーン時に出社を求められるかと言えば、「郷に入っては郷に従え」のごとく、柔軟に対応しているとのこと。金融やメーカー、メディアなどでもオフィスをクローズするほか、自宅勤務や災害時に備えたバックアップオフィスへの出勤が容認されている。
とはいえ、日本人駐在員は染み付いた習性からか、大雪時でも何とかオフィスに向かう人も目立つという。現地採用の米国人社員は基本的に、自宅勤務を選択。オフィスに出勤したところ、ほぼ日本人駐在員だったという笑えない話もあるぐらいだ。
会社命令がないと、職場に向かってしまう習性
翻って、国内の日本企業に跋扈する風潮として、
②長時間労働=会社に長く残る姿勢が評価される
③台風の中でも会社に通うのは忠誠心の表れ
――といったことが指摘される。これらを全てひっくるめると、横並びで、他人と違うことはしづらい上、評価されないどころか、マイナス査定となりかねない。従って、会社命令でもない限り、台風でも大雪でも職場に向かわざるを得ないという結論にたどり着く。
来年の東京五輪・パラリンピック開催中の混雑を緩和するため、国や東京都、一部の有力企業が時差出勤や自宅勤務の積極活用に向けて、動き出していると聞く。世紀の祭典に向けた取り組み自体は結構な話だが、これからの台風シーズン、大雪の季節に突入していく中、来夏のイベントよりも、目前の事態に向け、一刻も早く柔軟な働き方を導入することが先ではなかろうか。
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1972年生まれ。埼玉県行田市出身。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。2005年より政治部で首相官邸や自民党、外務省などを担当。17年、妻の米国赴任に伴い会社の休職制度を男性で初めて取得、妻・二児とともに米国に移住。在米中、休職期間満期のため退社。21年、帰国。元コロンビア大東アジア研究所客員研究員。在米時から、駐在員の夫「駐夫」(ちゅうおっと)として、各メディアに多数寄稿。150人超でつくる「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。専門はキャリア形成やジェンダー、海外生活・育児、政治、団塊ジュニアなど。著書に『妻に稼がれる夫のジレンマ 共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』(ちくま新書)、『猪木道 政治家・アントニオ猪木 未来に伝える闘魂の全真実』(河出書房新社)。修士(政策学)。