思考が「課題解決」から「戦略」に変わった瞬間

私が描いたビジョンは「皆が誇りを持てるような組織にしよう、そのために全国1位になろう」というものでした。次に、そこに行き着くためにはいつまでにどんな行動をとればいいんだろうと考え始めました。そこで初めて、「これが戦略を立てるということなんだ!」と気づいたのです。自分の思考が「課題解決」から「戦略」に変わった瞬間でした。

組織を変えるには、リーダーがビジョンを持つことが不可欠だと思います。さらに、リーダーはそれをチームメンバーに語り、同じ志を共有する必要があります。私の経験では、リーダーの語る内容が「こうすればいいよ」という方法論から「皆でここを目指そう」というビジョンに変わると、メンバーも大きく変わり始めます。

埼玉では、私がビジョンを語り始めてから、これまでは言われた通りの行動をしていたメンバーたちが、自らゴールに近づくためのアイデアを出し、議論し合うようになりました。半年後、埼玉の業績は30位から一気にベスト10入り。この成果がメンバーの自信になって好循環が生まれ、最終的には1位こそ逃したものの、全国2位にまで上昇したのです。

組織はリーダーしか変えられない

私はこの経験を通して、リーダーがビジョンを持ち、語ることの大切さを実感しました。その後も、商品企画部や宣伝部などさまざまな部署で組織改革を行ってきましたが、一貫して同じ思いを持ち続けてきました。これは取締役になった今も変わりません。

同僚の役に立ちたいのか、あるいはチームの業績を上げたいのか。お客様に評価されたいのか、それとも生き生きとした女性を増やして社会を変えていきたいのか──。わたしの場合、目先の目標は業績を上げることでしたが、目的は、「組織に誇りを持たせたい! そのために、活躍するメンバーの力を引き出し、自信をつけ、活躍する人を増やしたい。」ということでした。結果として達成できたのは、なぜ上げたいのかという「WHY」を追求したからだと思います。組織はリーダーしか変えられません。ボトムアップも一定の効果はありますが、リーダーの一言は組織改革のスピードを大きく加速させます。そして、ビジョンを語る際はリーダーの「想う範囲」も重要です。個人や仲間からお客様・市場、そして社会・地域へと、リーダーの想う範囲が広がるに連れて、チームメンバーの思考レベルも上昇していくからです。