何歳までに凍結すべきか

月花さんが勤務する都内の不妊治療クリニックでは、原則的には卵子凍結ができるのは40歳まで、保存期間は45歳まで、と定めているといいます。

「法律で決められているものではなく、クリニックの治療方針によるものです。私は、妊娠率や流産率を考えるなら、35歳前後までに行うのが理想かな、と思っています。ただ、実際には38〜39歳くらいの方が多いですね。ほとんどは未婚の方です。パートナーはいるけれど妊娠はもう少し先にしたい、という希望がある方には、受精卵の状態で凍結することをおすすめしています」

ただ、未受精卵の凍結を行っている月花さんのクリニックでも、受精卵の凍結に比べると件数は非常に少ないといいます。

「多くは体外受精のために受精卵にまでしたあと、凍結します。未受精卵で凍結保存するのは、私が勤務する施設では全体の1〜2%にも満たないですね。さらに、保存した卵子を融解して体外受精を試みる方は、1年に1〜2人いらっしゃるかどうか。凍結卵を持っている方のうち、半分ほどの方は使うことがない、という印象です」

なぜ凍結卵を“使わない”のか

凍結卵があっても、いざ妊活をするとなると、タイミング療法や人工授精からスタートする、あるいは新たに採卵をして体外受精をする人のほうが多いのだそう。

「凍結卵は、安心のため、と考えていらっしゃるのかもしれませんね。凍結卵を先に使ってしまうより、まずは現時点の卵子で妊活をしてみようと。最後の切り札として若い時に採卵した凍結卵がある、ということがひとつの安心となっているのかもしれません」

若いうちに卵子を凍結保存して眠らせ、妊娠できる状況がそろったときに使う。卵子の老化に対抗できるタイムスリップのような技術ですが、実際にはハードルもたくさんあるようです。

月花先生も「卵子凍結より、はやく妊活、不妊治療をスタートさせるほうが現実的」と指摘します。それでも、特徴をしっかり理解したうえでやると決めたなら、早めが吉! 気になる方は、専門クリニックに相談してみるのもいいでしょう。

文=浦上 藍子 写真=iStock.com

月花 瑶子(げっか・ようこ)
日本産科婦人科学会産婦人科専門医

東京・新宿にある不妊治療専門クリニック杉山産婦人科に勤務。 産婦人科領域で事業展開するヘルスアンドライツのメディカルアドバイザーを務める。 共著書に『やさしく正しい 妊活大事典』(プレジデント社)、 監修メディアに「性をただしく知るメディア Coyoli」がある。